最新記事

野生動物

象のフンが二酸化炭素を減らす──象牙輸出と持続可能な保護活動とは?

THE BREWING BATTLE OVER AFRICA’S IVORY

2022年8月8日(月)10時28分
テンダイ・マリマ(ジャーナリスト)
アフリカゾウ

アフリカゾウの保護活動は深刻な資源不足に悩まされている(ケニアのアンボセリ国立公園) BAZ RATNERーREUTERS

<象牙の最後の合法的な国際輸出から14年。しかし保護活動のコスト高から、象牙売却の権利を求める国も多い。取引規制だけでなく、カーボン・オフセットを先進国に販売するなど、保護方法は他にもある>

象牙の商業目的での合法的輸出が最後に行われたのは14年前のこと。南部アフリカ諸国は保管している大量の象牙の輸出を再び認めるよう、国際社会に働き掛けている。

11月にパナマで開催されるワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)締約国会議でも、南部アフリカ諸国は同様の提案をしている。

これらの国々にしてみれば、アフリカ全体で足並みをそろえて会議に臨みたいところだが、同じアフリカでも全てのゾウをワシントン条約の付属書I(絶滅の恐れがあるもの)に分類して商業目的の輸出入を禁じるべきだとの立場を取る国もあり、意見の隔たりは大きい。

アフリカゾウが付属書Iに分類されるかどうかは生息国によって異なる。ボツワナ、南アフリカ、ナミビア、ジンバブエの南部アフリカ4カ国のアフリカゾウについては、生息数の多さから付属書II(必ずしも絶滅の恐れはない)に分類されている。つまり例外的な状況に限って国際取引が認められているわけだ。

言い換えれば、アフリカ東部・西部の30を超える国々で構成される「アフリカゾウ連合(AEC)」が全ての象牙の国際取引の禁止を求めている一方で、アフリカゾウの多くが生息する「南部アフリカ開発共同体(SADC)」の加盟国は、象牙を売却する権利を求めている。

保護活動の展開にもかかわらず、アフリカゾウの生息数はこの10年、減少傾向にある。また、保護活動には費用がかかり、特に激しいインフレに悩むジンバブエや干ばつやコロナ禍による景気後退に苦しむナミビアといった国々にとっては大きな負担だ。

そこでこれらの国々は、自然死したゾウから採取したり密猟者から押収した象牙の売却を、1回に限って認めるように求めているのだ。

ワシントン条約により象牙の国際取引が禁止された1989年以降、締約国は輸出入を監視するために象牙をきちんと保管しなければならなくなった。

だが貧しい国々はこの措置に不満を抱いている。ジンバブエ国立公園・野生動物保護公社のフルトン・マングワンニャ総裁は、競売にかけた象牙が市場に流れ込めば、密猟の減少につながると考える。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏、第3四半期GDP改定は速報と変わらず 9

ワールド

ロシア黒海主要港にウクライナ攻撃、石油輸出停止 世

ワールド

中国人宇宙飛行士、地球に無事帰還 宇宙ごみ衝突で遅

ビジネス

英金融市場がトリプル安、所得税率引き上げ断念との報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中