象のフンが二酸化炭素を減らす──象牙輸出と持続可能な保護活動とは?
THE BREWING BATTLE OVER AFRICA’S IVORY
野生生物の違法取引の摘発を目指す団体「野生動物司法委員会」の20年の報告書によれば、未加工のアフリカ産象牙(1キロ当たり)の相場は17年の208ドルから20年には92ドルに急落している。
ワシントン条約機構で認められた競売が最後に行われたのは08年で、ボツワナ、ナミビア、南ア、ジンバブエの象牙計102トンが1キロ当たりわずか157ドルで落札された。
慈善団体セーブ・ジ・エレファントによると、闇市場の平均価格750ドルよりかなり安い。それでも計1500万ドルを超える売り上げが、ワシントン条約機構の規定に従ってゾウの保護に充てられた。
ジンバブエ国立公園・野生動物保護公社の主な運営資金は狩猟と観光の収入だが、ジンバブエは深刻な経済危機が続いており、財政事情は苦しくなる一方だ。給与の支払いは遅れがちで、密猟対策の装備や車両もままならない。
さらに、ジンバブエ全体でレンジャーが不足している。マングワンニャによれば、現状で新たに1200人を採用する必要がある。ジンバブエ屈指の野生生物保護区のワンゲ国立公園では密猟が大幅に減っているが、ゾウの生息数は環境収容能力の3倍に当たる4万5000頭を超えているなど、やるべきことはまだたくさんある。
欧米からの批判を警戒するジンバブエは5月に首都ハラレで、オランダ、ドイツ、フランス、スイス、カナダ、アメリカの駐在大使に、ゾウやサイの角や牙がずらりと並んだ倉庫を公開。国内で保管している象牙の売却について理解を求めた。
市場で売るだけでなく、買い手と価格を交渉することも考えているとマングワンニャは言う。「象牙の価値を解放したい。そうすれば、ゾウに殺されたりけがをしたり、畑を荒らされたりしている人々が恩恵を受けるだろう」
ジンバブエでは今年に入ってから少なくとも60人が、野生動物の侵入が原因で死亡している。人間を捕食するのは主にカバとワニだ。野生生物の保護政策を導入している他の国々と違って、ジンバブエは野生生物による被害に対する公的な補償がなく、侵入してきたゾウやカバなどを撃退する唐辛子銃のような予防措置への補助金もない。
持続可能な保護活動のために
ナミビアで野生生物保護区の資金は政府と国際的な寄付で賄われている。象牙の在庫は69トンあるが、売却を進めなければならないと、環境・森林・観光省のテオフィラス・ンギティラ長官は言う。「野生生物や関連製品の販売を推進して、その収入を保護に再投資したい」
ナミビアやボツワナでは、ゾウや水牛、カバなどに農作物を荒らされた農民は損失が補償され、死亡した場合は国が埋葬費用を負担する制度がある。