最新記事

陰謀論

陰謀論の次の標的は5G「コロナ禍の元凶は電磁波」

BEWARE THE COPYCATS

2021年2月5日(金)15時30分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)

magf210205_5G2.jpg

ナッシュビルで昨年12月25日に起きた爆発事件も反5G派の犯行と疑われている THADDAEUS MCADAMS/GETTY IMAGES

情報当局の報告書を見ると、5Gの基地局が出す電波が呼吸器系を弱らせ、新型コロナウイルスに感染しやすくなるなどといった説も流布しているようだ。

国土安全保障省は昨年5月、新型コロナウイルス絡みの偽情報に関する報告書で、反5Gのデマや破壊活動の増加と危険性に触れ、警告を発した。それによると「5Gが免疫系を阻害する、5Gの周波数帯を通じてウイルスが広がる」といった「虚偽の言説」がネット上にあふれているという。

国土安全保障省は暗号化されたサイトも含めソーシャルメディア上の動きを監視。新型コロナウイルスに絡めて5G施設への攻撃をあおる投稿が明らかに増えていると指摘する。ツイッターには鉄塔を「燃やして倒せ」というハッシュタグ付きで放火を扇動する投稿があふれているらしい。

国土安全保障省の報告書によれば、暗号化されたサイトでは過激派組織「イスラム国」(IS)の支持者が5Gインフラを破壊せよと呼び掛けるメッセージや動画も見つかっている。ロシア政府系の英語ニュースメディア「RTアメリカ」も、5Gの健康リスクを指摘する動画をYouTubeに投稿している。

昨年5月12日、ニューヨーク市警は「取扱注意」の報告書をまとめ、「5Gに関する陰謀論は......人種的・民族的動機による暴力的過激派、悪意ある反政府主義者、特定のイデオロギーを持たないものの偽情報に影響されやすい人物の間にますます浸透していく恐れがある」と指摘した。

同報告書が引用している研究によれば、ツイッター、フェイスブック、YouTubeなどで、5G技術が新型コロナウイルス感染症を引き起こしたと述べた投稿は、昨年の1月1日~4月20日に100万件を超えたという。

「反ワクチン派と5G陰謀論者はかなり重なっており、一部の5G陰謀論者が新型コロナウイルスのワクチン接種を拒む可能性がある」と、この報告書は指摘している。

これ以降、国土安全保障省の「国土安全保障情報ネットワーク」で共有された5G陰謀論関連の報告書は400点余り。そのほとんどは、「極右系」の人たちの間に陰謀論が広がりつつあることに警告を発している。最も有名な「ストップ5G」という運動は、さまざまなソーシャルメディアで5万人を超すメンバーを擁しているとのことだ。

パニックと暴力を扇動

同省によれば、5G陰謀論は、コロナ否定派、過激派、反ワクチン派が自らの主張への支持を広げたり、社会に混乱を生み出したりする道具としても使われているという。

昨年5月1日、フィラデルフィアの携帯電話基地局で、変圧器の火花により小規模の火災が発生した。するとその3日後、「ブリスリング・バッジャー旅団」と称するアナーキスト(無政府主義者)集団が犯行声明を発し、5Gへの懸念が理由でこの施設を標的にしたと述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中