最新記事

BOOKS

佐久間宣行が「正しいことが的確に書かれている」と唸った1冊の本

2023年1月8日(日)16時50分
朴順梨(ライター)
佐久間宣行

佐久間宣行/1975年、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ(銀座 蔦屋書店にて撮影) Photo:遠藤 宏

<現在は多方面で活躍するテレビプロデューサーの佐久間氏だが、20歳の時は絶望に満ちた日々だったという。そんな彼が「すごく共感した」と評するスタンフォード発のロングセラーには、「失敗の仕方」が書かれていた>

「今回初めて読んだんですけど、正しいことが書いてあるという感じがしました。僕がこれまで社会人生活を送ってきた中で思ったことが、この本には的確に書かれている」

「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」......。テレビ東京時代に数々の番組を生み出し、2019年からは「オールナイトニッポン0」(ニッポン放送)のパーソナリティも務める演出家の佐久間宣行さんに、『新版 20歳のときに知っておきたかったこと――スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス ※アマゾンはこちら ※楽天ブックスはこちら)について聞くと、開口一番こう答えた。

同書はスタンフォード大学工学部教授のティナ・シーリグが「みなさんのやる気に火をつける」ためにまとめた1冊だ。2010年に邦訳が出て、日本で30万部のロングセラーとなった後、2020年に大幅に増補された新版が刊行された。

佐久間さんは「この本を学生時代に読める人は、本当に、幸せなんじゃないかと思うんですけど」と語り、帯に自身の言葉を寄せている。

手がけた番組は軒並みヒット、著書の『ずるい仕事術』(ダイヤモンド社)は発売約4カ月で10万部を突破するなど、順風満帆なテレビマン生活を送ってきたと思いきや、20歳の時は絶望に満ちた日々だったという。

そんな佐久間さんに、自身の20歳の時のことや、同書に書かれた「正しいこと」について聞いた。

※関連記事:47歳の佐久間宣行が20歳の若者に「育んでほしい」と願うもの

◇ ◇ ◇

クリエイティブな仕事ができるとは全く思っていなかった

――20歳の時って、何をしていたか覚えていますか?

僕は18で福島のいわきから出てきたんですけど、その理由はいわきにいた頃には見られなかったお芝居や映画を見たかったから。

大学に入学した直後はサークルに入っていたんですが、最初の1年間で完全に東京酔いしてしまった。それに毎日お芝居や映画ばかり見て大学にほとんど行かなかったら、2年の時に留年しちゃったんですよ。だって2単位しか取ってなかったから。

「何やってるんだろう」って、とにかく絶望してましたね。

――何か目標があったわけではなくて。

先が見えなかったです。好きなことをしてはいたけれど、自分が天才とも思えなかったし。それに冷静に考えると、どうしたってあと3年で社会に出るのに、3年間で楽しい仕事ができる人間になれるのかも分からない。

社会で活躍したいというのではなく、楽しい仕事をして楽しい人生を送り続けたかったけれど、そんな力量が自分にあるとは思えませんでした。

――とはいえ、大学を5年で卒業した後はテレビ東京に制作職で入社しましたね。

留年したから親にこれ以上迷惑かけられないと思ったので、最初は営業から何からあらゆる業種の採用試験を受けたんですよ。僕は99年入社なんですけど、大就職氷河期だったので、とにかくどこでもいいから就職しようと思って。

そしたらメーカーや商社の営業職に採用されたんです。居酒屋でアルバイトをしていたので接客業は得意だったけど、テレビの制作ができるとは思っていなかった。

それでも記念受験でフジテレビの面接に行ったら、役員から「君は面白いと思うものを言語化するのがうまいから、番組制作に向いてるんじゃない?」って言われて。その時点で制作職を募集していたのがテレビ東京だけだったので、すぐに書類を送りました。

――なぜテレビ制作はできないと思っていたんですか?

僕が勝手に思っていただけなんですけど、メディアで活躍する人って、それこそ演劇とかで活躍して、学生時代から輝いている人なんだろうと。でも僕は、ただ演劇が好きで見ているだけだった。

それに、1年で辞めちゃったサークルが広告研究会だったんですけど、同期や後輩に、大学卒業後に映画監督やプロデューサーとして活躍するような、錚々たるメンバーがいました。今は違うと思いますが、僕が中高生として過ごした頃のいわきは文化不毛地帯だったから、在学当時から活躍していた彼ら彼女らとはスタート地点から違うなと思ってしまった。

だから自分がクリエイティブな仕事ができるなんて、全く思わなかったですね。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、英国への大規模投資発表 AIなど

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中