コラム

「アカウントは2回消した、それでも飽きない」本職はビル管理人のフォトグラファーは言う

2019年12月16日(月)16時45分

From Clay Benskin @clay_benskin

<現在のストリートフォトグラフィーを代表する1人、ニューヨークのブロンクスで生まれ育ったクレイ・ベンスキン。candidに重きを置く彼が語るストリートで撮ることの魅力>

今回紹介するInstagramフォトグラファーは、ニューヨークのブロンクスで生まれ育ったクレイ・ベンスキン。現在もブロンクスに住み、本職はビルの管理人である。しかしながら、インスタグラムが世に出て以降のストリートフォトグラフィーを代表する1人といっていい。

本格的に写真――彼によれば、写真ではなく、ストリートフォトグラフィーであるが――を始めたのも、インスタグラムの登場とほぼ同じ時期の2012年頃からだ。友人に感化され、ストリートフォトグラフィーに興味を抱き、その後、インターネットの記事を通して、むさぼるように独学で習得していったという。

ベンスキンのストリートフォトグラフィーはしばしば多くのユーモアを含むが、その写真要素の中で彼が最も重きを置いているのはcandid(キャンディッド)だ。可能なかぎり、目の前にあるシーンをあるがままに写真に収めることである。基本的に被写体は人物。ストリートでどこまで気付かれずにその被写体に近づけるかが1つのポイントとなり、それにある種エクスタシー的感覚を感じるらしい。

ただ、candid、つまり、いかに人物被写体に近づけるかに撮影の力点を置き、印象的な写真を生み出しているのはベンスキンだけでない。他にも数多くのそうしたストリートフォトグラファーがいる。なぜなら、被写体との緊張をはらむギリギリの距離感、あるいは極めて自然な距離感は、ストリートフォトグラフィーに限らず、フォトジャーナリズム、フォトドキュメンタリーの王道の1つになっているからである。

実のところ、ベンスキンのストリートフォトグラフィーの魅力の秘密は、直接的な写真のテクニックやセンスではない。それは彼の人生哲学と、旺盛な好奇心から来ていると言えるだろう。前者は「誰もが物語を持っている」という哲学だ。後者は、被写体である人物に対する「Watching Skill - 観察能力」である。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story