コラム

トランプ政権誕生でワシントンへ「全てはこのための準備に過ぎなかったとさえ思う」

2019年11月23日(土)13時35分

From David Butow @davidbutow

<紛争や災害などを取材してきたベテラン・フォトジャーナリスト、デービッド・ブットウ。「好奇心がある限り、新しいものを見つけられる」と、サンフランシスコから拠点を移した>

今回取り上げる写真家は、ニューヨークで生まれ育ち、サンフランシスコを拠点に世界各地のさまざまな出来事――紛争、自然災害、文化――を取材してきたベテランのフォトジャーナリストだ。デービッド・ブットウ、55歳である。近年は、トランプ政権の誕生とともにワシントンDCに拠点を移している。

彼が持つヴィジュアル的に大きな特徴は2つある。1つは、被写体への距離感覚だ。もちろん写真における視覚上のものだが、可能な限り肉眼で見たものと同じような距離感を保っている。時に、メインの被写体に寄り過ぎて押し付けがましさが強く出てしまうような状況下でも、そのギリギリの一歩手前で、巧みに、あるいは本能的に、立ち位置を決めてシャッターを切っている(例えば、下の香港の写真)。

もう1つは、構図と光を巧みに利用した美しさである。その中で、どちらかといえば被写体の静的な決定的瞬間――ストールン・モーメントとも呼ばれる――を映し出しているのだ。

この2つの視覚的要素が、ブットウの大きな才能と言っていいだろう。実際、ワールド・プレス・フォト(世界報道写真コンテスト)など世界的な賞を受賞しているが(その代表作は、2004年のスマトラ島沖地震・インド洋大津波の際にインドネシアで撮った写真)、この距離感と美的感覚は、彼の作品のほぼ全てに共通する主要な要素だった。

とはいえ、そうした視覚性の妙だけでは、単なる優等生的な写真家で終わっていたかもしれない。そうはならず、多くの才能ある写真家の中からブットウを際立たせているのは、彼の写真哲学だ。

ブットウの写真哲学は、フォトジャーナリズムの基本的精神と重なり合いながらも、よりパーソナルだ。被写体自身が何かを語るような写真を撮ることを心掛け、そこから主観的な真実を探ろうとしている。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のチャットボット、反ユダヤ主義的との苦情受

ワールド

ロイターネクスト:シンガポール、中国・米国・欧州と

ビジネス

日経平均は続伸、円安が支え 指数の方向感は乏しい

ビジネス

イオンが決算発表を31日に延期、イオンFSのベトナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story