コラム

ホームレスの猫たちに惚れ込んで... カザフスタンの旧市街にて

2019年04月19日(金)11時30分

そこには、彼女自身が本能的に持っているであろう構図へのセンス――パーフェクトになる手前でわざとドレスダウンした着こなしのような魅力が光っている。それがカザフスタンの首都アスタナの旧市街の街並みや、街の雰囲気と重なり合って不可思議で落ち着いたメランコリーな感じを漂わせている。

実のところ、こうした詩的な感覚こそがゴーアの最大の持ち味だ。結果として、見る者を彼女の世界に感情移入させてしまうのである。そしてそれは、彼女自身が密かに掲げている裏のアジェンダにまで目を向けさせるかもしれない。ホームレスの動物に自らを投影し、彼らの身の上を考えたりするのだ。それにより動物たちの境遇が変わっていくことを願っているという。

ちなみに、ゴーアの作品の中に流れる「メランコリー性」は、彼女によれば意図的なものではない。ある種、本能的な感覚であり、結果としてそうなっただけだという。

今後は動物だけでなく、人間の撮影も増やしていくつもりらしい。自分の写真世界をフレームの中には入れたくない、固定したくない、とゴーアは語る。自分が愛し、自分をエキサイトさせてくれるもの、興味を与えてくれるものも含めて、それらと写真を通して話したい――つまり、表現したいのだという。

それが、ゴーアが自身を取り巻くさまざまな世界と付き合っていく方法だ。

今回紹介したInstagramフォトグラファー:
Evgeniya Gor @gykavka

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プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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