コラム

ホームレスの猫たちに惚れ込んで... カザフスタンの旧市街にて

2019年04月19日(金)11時30分

From Evgeniya Gor @gykavka

<写真は独学で覚えた。被写体のほとんどは、猫と犬。詩的な感覚こそがエヴジェニヤ・ゴーアの最大の持ち味だ>

自分自身に対して自然体であることは、写真家にとって最も大切なことかもしれない。それは、誰かのために撮影する、あるいは、こう撮れば世間が気に入ってくれる、認めてくれると思って撮影する写真の対極に位置する。

むろん、後者も写真にとって重要な要素だ。人は社会との絡み合いで生きている。だがその被写体に、あるいはその写真を撮る世界に惚れ込んでいなければ、いくら才能のある写真家でも結局は飽きられてしまう。また、自分の成長が一定のところで止まってしまう。残念ながらそれは、インターネットとSNS の時代、写真界の悲しき傾向だ。

今回取り上げるのは、そんな中、自らの日常に絡みつくものを自然体で、気負いもなく一人の観察者として撮影し続けているカザフスタンの32歳女性、エヴジェニヤ・ゴーアだ。写真は独学で覚え、2006年から「Among the Worlds」というプロジェクトを継続している。

そのメインテーマは、彼女が常に興味を抱き続けているという、人間と動物の関係だ。被写体のほとんどは、猫と犬。とりわけ、ゴーアの日常的な環境に常に存在しているという猫である。ただし、大半は飼い猫ではない。彼女が「ホームレス」と呼ぶ、ストリートで生活している猫たちである。

ゴーアが写し出すホームレスの猫たちには、動物愛護活動家がしばしば意見広告などで社会に訴えかけるような、大きな悲壮感はない。かといって可愛いらしさを前面に押し出した写真でもない。すでに述べたように、ゴーアが、彼女の生活空間で接する猫などの動物を自然体で撮っているだけだ。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story