コラム

手術されるインターセックスの子供たち トップモデルが壮絶な告白

2018年06月07日(木)16時32分

From Hanne Gaby Odiele @hannegabysees

<昨年1月、ファッションモデルのハンネ・ギャビー・オディールが、男性と女性の生理学的性質を両方有する「インターセックス」だとカミングアウト。自らの過去を語り始めた。行動することもまたアートである>

アートとは、さまざまなものに伴う感情や感覚を自らの創造性、能力、あるいは手段などを用いて表現することだ。その意味で、行動そのものもアートになり得る。

今回取り上げるのは、そうした意味でのアーティストだ。長年世界のトップ・ファッションモデルとして活躍し、昨年1月に「インターセックス」だとカミングアウトしたハンネ・ギャビー・オディールである。モデルとして得た名声を活用し、インターセックスの基本的人権を訴えている。ベルギーの小さな街コートトライーク出身、30歳だ。

インターセックスとは簡単に言えば、大半の場合、男性と女性の生理学的性質を不完全ながら両方とも有している人たちのことだ。医学的にはDSD(Disorders of Sex Development/性分化疾患)と呼ばれる。

ハーマフロダイト、あるいはアンドロジナスなどとも呼ばれてきた。だが、1990年中頃からはインターセックスという言葉が、紆余曲折を経ながらも主に使われるようになってきている。

なぜならハーマフロダイトは、両性の生殖機能を完全に備えたギリシア神話の神からきているため、大半のインターセックスの者たちの状態に反し、完全な半陰陽者(性的・生殖機能的に半分が男性で半分が女性の人)や両性具有者(男女両方の性を兼ね備える人)として誤解を与えるためだ。また、アンドロジナスは本来のインターセックスの意味だけでなく、雰囲気的なファッション感覚でも使われていることが理由である。

インターセックスの範疇には、両性の生殖器、生殖腺、染色体、ホルモンの分泌状態などの組み合わせによって30以上、いや60以上とも言われるパターンがある。そのため、それら全てを包括するインターセックスという総称が使われやすいのである。

ちなみに、シンプルな状態(内外生殖器やホルモンなどもヘテロとほぼ変わらない状態)まで含めれば、インターセックスで生まれてくる確率は1.7%ほどだという。他方、後述する完全型アンドロゲン不応症の場合は、10万人に2~5人ほどの確率と言われている。

インターセックスはまた、近年本格的に市民権を得はじめたトランスセクシュアル、あるいはトランスジェンダーと呼ばれる人たちとは、基本的にまったく意味が異なる。

そうした人々は、ジェンダー・アイデンティティと生理学的外見が異なっていたとしても、通常は1つのジェンダー・アイデンティティを持つ。だがインターセックスは、多くが両方のジェンダー・アイデンティテイを曖昧に、あるいはその間で揺れ動きながら持っている。また、男性・女性を決定する染色体分析ではそれを判定できない場合もある。そのため第三の性を持つ人たちとも認識されはじめている。

オディール自身、生まれたときの外見は女の子だった。両親もそう思っていた。だが生後2週間ほどして感染症にかかったことがきっかけで、一般社会でタブーとされていたものが判明されていく。

血液検査では普通の男の子だった。身体内部に精巣を有し、子宮と卵巣は彼女の身体には存在していなかった。男性の特質を表すべきXとYの染色体を兼ね添えてはいたが、精巣から作り出される男性ホルモンはオディールの身体の中で完全に拒絶され、女性ホルモンに変換されていた。CAIS(Complete Androgen Insensitivity Syndrome/完全型アンドロゲン不応症)だったのである。

そして専門医と呼ばれる者から、オディールのインターセックスについては世間から完全に秘密にし、手術を行うよう諭される。子供ということでオディール本人の同意なしにだ。

Hanne Gaby Odieleさん(@hannegabysees)がシェアした投稿 -

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:米撤退ならイランがエネルギー供給掌握へ、攻撃

ビジネス

テスラが日本で販売強化、燃料・物価高追い風 6人乗

ビジネス

日銀版需給ギャップ、25年10―12月期は+0.6

ワールド

米内務省、人員削減へ 効率化計画の一環
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 7
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 8
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 9
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 10
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story