コラム

貧困を解決するベーシック・インカムは人を賢くもする/unleash(解放する)

2017年12月21日(木)17時23分

www.ted.comより

【今週のTED Talk動画】
Poverty isn't a lack of character; it's a lack of cash
https://www.ted.com/talks/rutger_bregman_poverty_isn_t_a_lack_of_character...

登壇者:ルトガー・ブレグマン

ここ最近、多くの人が人工知能(AI)に職を奪われるのではないかと考えるシリコンバレーのリーダーたちが、その対策として「ベーシック・インカム」に言及する機会が増えている。ベーシック・インカムとは、人々に最低限の生活を保障できるぐらいのお金を与えようというコンセプトだ。

このTEDトークでは、ジャーナリストで歴史家であるルトガー・ブレグマン氏が、歴史的な背景から貧困について踏まえたうえで、ベーシック・インカムのようなものが果たして将来において本当に有効かどうかを考察している。

彼がまず指摘するのは、「お金のない人=頭が悪い人」という方程式が成り立つのではなく、お金がないと悪い決断をしてしまう傾向が強まるということだ。続いて、ブレグマン氏はベーシック・インカムを実際に導入した実験を紹介している。カナダのある町では、誰も最低生活水準を下回らないようベーシック・インカムが導入されたという。結果は大成功で、その町の市民はより賢くなり、健康面での改善も見られた。そして似たような結果はほかの実験からも出たのだ。

とても意外に思えるアイデアだが、このTEDトークを見ると、自分の住んでいる地域にも導入されるよう望むかもしれない。仕事、貧困、人間性について考えさせられるトークとなっている。

キーフレーズ解説

unleash
解放する
(動画10:17より)

unleashの本来の意味は、犬をひも(leash)から放つことです。今回のように比喩的な意味で用いられると、何かを束縛から解放することを示します。特に、今まで制限されていたものがその制限から解放され、爆発したり影響を及ぼしたりするというニュアンスを持ちます。このTEDトークでブレグマン氏は、貧困をなくせば、たくさんのエネルギーと才能がunleashされると言っています。

ここでいくつかこの表現を用いた例を紹介します:

●The aim of deregulation is to shrink the government and unleash entrepreneurship.
(自由化の狙いは、政府を縮小して起業家精神を解放させることです)

●A major blizzard is expected to unleash its fury on Boston next week.
(来週、大型の猛吹雪がボストンに直撃すると予測されています)

●Trump's comments have unleashed white nationalists.
(トランプのコメントは白人至上主義者を解放しました)

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 異文化コミュニケ−ション、グローバル人材育成、そして人事管理を専門とする経営コンサルタント。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『シリコンバレーの英語――スタートアップ天国のしくみ』(IBC出版)、『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)など著書多数。最新刊は『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著、クロスメディア・パブリッシング)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ紛争、エスカレートさせないよう米に望む=

ビジネス

2%物価上昇まだ定着せず、持続的達成を日銀に期待=

ワールド

トランプ氏は「被害少女知っていた」と米富豪記述、資

ワールド

豪10月就業者数は予想以上に増加、失業率も低下 利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story