コラム

皆既日食で盛り上がるアメリカ

2024年04月03日(水)12時00分

まず、テキサスの場合は、サンアントニオ、オースティン、ダラスという大都市がいずれもほぼ皆既帯に入っています。特にサンアントニオでは、直前に天文学者が再計算したところ、以前の予報とは違って、市の中心部はほぼ皆既帯に入るらしいという予報に変わり、該当するエリアの住民は喜んでいるそうです。また、オースティン市を含むトラヴィス郡では観光客が殺到することや、交通がマヒすることを予測して、1カ月前から非常事態宣言を出して対応しています。


一方で、ニューヨーク州の場合は、州の北西にあたるバッファロー市が皆既帯に入っています。そして、市の中心に近いナイアガラの滝でも皆既日食になるということで、こちらも空前の人出が予想されています。また、州内の刑務所では、日食に興奮した受刑者が騒動を起こすのをおそれた当局が、日食の時間帯は各房内で静粛にせよという命令を出したところ、受刑者が「日食を見る権利が侵された」として訴訟を起こしており、その結果が注目されていたりもします。

ところで、皆既日食が起きている時間帯では完全に太陽が隠れてしまうため、昼でも恒星や惑星が見られることになります。そこで期待されているのが、現在地球に接近中の「悪魔の彗星」こと「12P/ポン=ブルックス彗星」が皆既日食と同時に肉眼でも見られるという可能性です。

この彗星はガスなどを噴出している様子が「鬼の角」のように見えることから、「悪魔の彗星」と言われているのですが、その姿が皆既日食の時間帯に真っ黒な太陽と一緒に観測されるかもしれないということで、各地のメディアが取り上げています。

現時点の天気予報は、テキサスでは曇り、ニューヨーク州のバッファロー市からカナダ方面では曇り時々晴れとなっています。ただ、春のこの時期は天候が変わりやすい季節でもあり、日食当日に至るまで天気予報にも大きな関心が寄せられそうです。いずれにしても、今週から来週にかけてのアメリカは、この皆既日食の話題一色になりそうです。

【関連記事】
大谷翔平の今後の課題は「英語とカネ」
日本軍が3000万人を虐殺した!? 櫻井よしこ氏も激怒した本『日本のホロコースト』の作者に直撃した

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ11月輸出、前年比7.1%増 予想下回る

ワールド

イスラエル、兵器産業自立へ10年で1100億ドル投

ビジネス

物価目標の実現「着実に近づいている」、賃金上昇と価

ワールド

拙速な財政再建はかえって財政の持続可能性損なう=高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story