コラム

皆既日食で盛り上がるアメリカ

2024年04月03日(水)12時00分
皆既日食を観察する人たち

2017年8月のシカゴで皆既日食を観察する人たち Alexandra Wimley/ Chicago Tribune/ TNS/ ABACAPRESS.COM/ REUTERS

<今月8日、テキサスからメインにかけて皆既日食が見られる「皆既帯」がアメリカを横断する>

4月8日の月曜日に皆既日食が見られるということで、アメリカでは連日各地での盛り上がりの様子が報道されています。皆既日食というのは、新月の際に太陽と地球の間に月が入って、月が完全に太陽を隠す現象です。皆既日食が起きている状況を高空から見ることができれば、丸く黒い月の影が地表を移動していくことになります。

その黒い影の場所では、完全に太陽の隠れる皆既日食になりますが、その範囲は幅100キロ程度の狭い帯状のエリア(皆既帯)だけです。その周囲の幅広い地域では部分的に太陽が隠れる部分日食が見られます。多くの場合には、皆既日食が起きるエリア、つまり皆既帯というのは大洋上であったり、人口の少ない砂漠地帯であったりするわけで、特別な「日食観測ツアー」が設定されたりします。


ですが、今回は皆既帯が北アメリカ大陸を斜めに移動してゆく中で、数多くの大都市を通過してゆくという非常に珍しい日食になっています。月の影は、まず太平洋からメキシコ西岸に上陸し、メキシコを斜めに縦断して、米国中部時間の午後1時27分にテキサス州に入ります。

そこから、テキサスの中心部を斜めに通過、アーカンソー州のリトルロック、インディアナ州のインディアナポリスを通って、オハイオ州のクリーブランド、ニューヨーク州のバッファローを通って北東へ向かい、東部時間の3時35分にメイン州からカナダに抜けます。

「一生に一度」の一大イベント

この皆既帯に含まれる地域では、4月7日から8日にかけて主要なホテルは予約で一杯になっています。例えば、私の住むニュージャージー州では、太陽の約70%が隠れる部分日食が見られることになっています。ですが、少し足を伸ばせば皆既日食が見られるということで、バッファローやクリーブランドに「遠征」するという人はかなりいるようです。

今回を逃すと、アメリカ本土で皆既日食が見られるのは20年後の2044年で、その時は西部モンタナ州とノースダコダ州に限られます。ということは、今回のように大都市圏で皆既日食が見られるのは「一生に一度」ということになるわけで、かなりの盛り上がりになっています。

実は、7年前の2017年にもアメリカで皆既日食があり、かなり盛り上がったのですが、この時は人口密集地を通ることはあまりなく、また、曇天で観測ができなかった地域も多かったのです。この時と比較すると、今回の盛り上がりは相当なものになっています。量販店でも、あるいは通販サイトでも「日食観測用メガネ」が大々的に売り出されています。また、皆既日食が通る各地の国立公園では「皆既日食観測」を証明するスタンプを用意しているそうです。

そんな中で、各地のローカル報道の様子から見てみると、いちばん盛り上がっているのはテキサス州とニューヨーク州です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアが米国の送金非難、凍結資産裏付けの対ウクライ

ビジネス

再建中の米百貨店メーシーズ、24年通期の業績予想を

ワールド

アサド政権の治安部隊解体へ、シリア反体制派指導者が

ビジネス

アルバートソンズがクローガーとの合併中止 裁判所の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 5
    ノーベル文学賞受賞ハン・ガン「死者が生きている人を…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 8
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 7
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 8
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 9
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 10
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story