コラム

アメリカ北東部でコロナ感染が沈静化しているのはなぜか?

2020年08月11日(火)13時00分

ニューヨークのレストランでは、現在も店内での営業が禁止されている Jeenah Moon-REUTERS

<レストランやバーへの営業制限、大人数が参加するパーティーの禁止など、米北東部では「準ロックダウン」とも言える感染防止策が続いている>

アメリカ全土で見るとコロナ危機はまだまだ拡大中です。感染数は500万、死者は16万を超えていまだに落ち着く気配はありません。現在の感染の中心(エピセンター)は、フロリダ、テキサス、アリゾナなど南部や中西部で、新規陽性者の勢いはやや鈍っているものの、死者は増えており厳しい状態が続いています。

また、8~9月にかけて全国の学校では新学年を迎えますが、多くの学区では「全面再開」とするのか「リモート」とするのか、両者を合わせた「ハイブリッド」とするのか検討が続いています。また再開やハイブリッドで行う学区でも、ほとんどの場合は家庭の判断で100%リモートが選べるようにしているようです。そんな中で、就学年齢の子供たちを対象としたPCR検査数が伸びるとともに、子供の新規陽性者も増えており、7月後半の2週間で9万7千人の子供が陽性となったとことは全米に衝撃を与えました。

そんな中で、私の住む(ニュージャージー州をはじめとした)北東部は、落ち着きを見せています。例えば、

▼ニューヨーク州......累計陽性者数421,336、累計死者数25,204
▼ニュージャージー州......累計陽性者数185,031、累計死者数14,025

という大変に厳しい数字となっています。ですが、最新の数字としてはかなり落ちついてきており、例えば現地8月10日の1日の数字としては、

▽ニューヨーク州......新規陽性者数476、陽性率0.88%、死者数2
▽ニュージャージー州......新規陽性者数285、陽性率0.98%、死者数4

となっています。顕著なのは、PCR検査全体における陽性率です。両州ともに、毎日3万から5万人単位での検査を続けているにも関わらず、7月後半以降は1%を切っており非常に落ち着いています。

その原因ですが、とりあえず3つ考えられます。

集団免疫を獲得した可能性も?

1つは、一時期の感染爆発により抗体保有者が増え、一種の集団免疫になっているという可能性です。例えば、ニューヨークではかなり規模の大きなランダムな抗体保有検査で20%という数字が出ています。

理論的には集団免疫ができて、免疫の壁に守られて全体的な感染が収束するには60%の抗体保有率が必要という指摘もあります。ですが、ニューヨークの場合は活動が激しく、接触機会の多い通勤者や若者の間での抗体保有率は、全平均の20%より高くなっていて、相当に高い可能性も指摘されています。

<関連記事:景気はどん底なのにアメリカ株はなぜ上がる?

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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