コラム

クルーズ船対応に見る日本の組織の問題点──権限とスキルの分離が組織を滅ぼす

2020年02月21日(金)17時30分

特に日本に強い考え方ですが、アジアでも欧米でも組織と名のつくものには、程度の差こそあれ、そうした傾向はありますし、何よりも心理面や関係性をコントロールすることで、組織を動かそうという手法は方法論の違いはあっても世界中にあります。

ただ、今回のように未経験の危機、しかも人命に関わる危機を管理しなくてはならない、そのような極限的な場において「正しいだけでは動かない」という組織の弱さを露呈してしまうというのは、これは組織の作り方に問題があるのだと思います。

それは「権限とスキルの分離」ということを平気でやる文化ということです。

権限のあるところにはスキルがない、スキルは権限のないところから上へ上げなくてはならない、その際にさらに悪いことに「専門スキルだけでなく、一般的な管理スキルのない人材が、権限を持っている」という配置も平気でやる、これは大変です。

取り残された組織改革

そうなると、ネガティブ情報は上がらなくなり、正しいノウハウも上がらなくなって、トップの判断がエラーの連続になってしまい、組織全体が崩壊してしまいます。今回の「ダイヤモンド・プリンセス」の問題では、直接命に関わる問題になってしまっているのですが、その根底にはこうした組織の作り方をしてしまう文化があると思われます。

野党は、今回の件で批判を強めるかもしれませんが、民主党政権当時に「政治主導」を自称しながら、こうした組織づくりの欠陥には何の改革も出来なかったのですから批判する資格があるとは思えません。

それはともかく、「権限とスキルを分離」するだけでなく、「一般的な管理スキルもないところに権限を与える」とか、「年齢や過去の実績によって、自動的に権限を与える」といった組織づくりは、官民ともにあちこちで見られます。

今回の「ダイヤモンド・プリンセス」における危機管理については、岩田医師が動画削除後に行った会見で語っていたように、改善へと向かっていることを祈ります。

ですが、この失われた30年、いやバブルに浮かれて情報化、国際化、ソフト化を怠った80年代から数えると、失われた40年の間、日本の官民がこうしたリーダーシップの改革、組織づくりの考え方の改革を怠ってきたのは事実だと思います。そのことが、日本の官民の組織を崩壊させてきたのだと思うと、その重さには慄然とさせられる思いがします。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ2都市にロシアが攻撃、和平協議直後

ビジネス

乳児ボツリヌス症の集団感染、バイハート社の粉ミルク

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 8
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 9
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story