コラム

民主党予備選まで2カ月、トランプ弾劾と同時進行の異常事態

2019年12月05日(木)17時20分

ちなみに、「後出しジャンケン」でアイオワ、ニューハンプシャーという初期の予備選を回避して参戦することになったマイケル・ブルームバーグ氏は基準に達していません。

ということは、現時点で生き残っているのは(ブルームバーグ氏を除けば)事実上、以下の5人ということになります。

▼ジョー・バイデン前副大統領・・・・・・・27.8%
▼バーニー・サンダース上院議員・・・・・・15.6%
▼エリザベス・ウォーレン上院議員・・・・・14.2%
▼ピート・ブティジェッジ市長・・・・・・・11.4%
▼エイミー・クロブチャー上院議員・・・・・2.4%

という顔ぶれです。数字は、現時点での全国世論調査の単純平均値(政治サイトの「リアル・クリアー・ポリティクス」による)です。

とりあえず、この5人を中心にこの12月19日のテレビ討論、そして2月初旬のアイオワ党員集会、ニューハンプシャー予備選が行われることになりますが、その注目点はいくつかあります。

支持率伸ばすブティジェッジ

まず、ステイヤーを入れた6人のなかで、左派はサンダースとウォーレンの2人だけになりました。ということは、これまでと違って12月のテレビ討論では左派はディベートで劣勢となる可能性があります。そうなると、討論の全体が実現可能な中道政策の論議中心になるかもしれず、雰囲気がまったく変わることもあり得ます。

左派では、一時期勢いのあったウォーレンがやや低迷しています。医療保険問題で、急進的な国営皆保険を実現する道を示せないことなど、精彩を欠いているからです。そのウォーレンがどの程度、具体的な政策を示せるかは注目されます。

この間、支持率を大きく伸ばしたのはブティジェッジです。左派の言う「民主的な社会主義」に対して、自分は「民主的な資本主義者」と胸を張り、事実上オバマ政治の延長としての漸進的改革を主張、その一方で同性婚者として「トランプ時代へのアンチ」にもなるというユニークな存在で、なんといっても37歳という若さは魅力です。全国平均はまだ3位ですが、序盤戦となるアイオワ、ニューハンプシャーでは世論調査1位に躍り出ており、注目がされます。

問題はやはり「予備選と弾劾が同時進行する」という前代未聞の事態です。これによって民主党は自滅するのか、反対に弾劾調査を進めることで、無党派層に「やっぱりトランプではダメだ」と思わせることができるのか、年明けの政局は全く不透明と言えます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 6
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story