コラム

トランプ亜流にも劣る、韓国への素材輸出規制

2019年07月09日(火)18時30分

今回の措置の延長上に、日本が半導体と有機ELパネル、あるいはスマホの最終生産というビジネスで、もう一度戦うのであれば、トランプ亜流の通商戦争として格好はつくかもしれません。ですが、日本の経済界には、そのような資金もないし、製造ノウハウもないのです。

まして、スマホのビジネスについては、世界の若者のニーズを調べる力もなければ、各国別に異なる仕様を前提に複雑な販売の交渉を進めるだけの人材も揃っていません。負けに負け続けて投げ出したビジネスです。かろうじて裾野部分の素材関係で特許を維持しているだけというと、少々言い過ぎかもしれませんが、いずれにしても、韓国企業を「いじめ」ても、そのシェアを「取り返す」だけの能力は日本にはないのです。

この点はトランプ流と比べて大きく劣る点と言わざるを得ません。

一方で、韓国の半導体、パネル、スマホ製造の産業を傷つけることは、より川下に属する日本のスマホ販売とこれに関連したビジネスも傷つけることになります。ということで、日本側は、制裁のイニシアティブを取っているように見える一方で、素材が売れず、最終製品も買えないという経済上の二重苦を背負い込むことになりかねません。

では、今回の措置に走った政権に対して、野党がポイントを稼いだかといえば、旧民主党勢力は、尖閣国有化に走った歴史が示すように、ナショナリズムに関わる問題では及び腰といいますか、流されるがままであって、今回もしっかり歯止めをかける努力をしていません。その意味では同罪とも言えます。

どう考えても、今回の措置は日本経済にとってはマイナスでしかありません。選挙後には恥を忍んで止めるしかないと思います。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、真珠湾攻撃引き合いに イラン攻撃巡り

ワールド

トランプ氏、中東への米軍追加派遣否定 対イラン作戦

ビジネス

米新規失業保険申請、8000件減の20.5万件 金

ビジネス

ECB6会合連続で据え置き、中東情勢で物価リスク 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 6
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    トランプ暴走の余波で加熱するW杯「ボイコット論」..…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story