コラム

二大政党制が日本で根付かないのは「残念なリベラル」のせいなのか

2019年06月25日(火)17時10分

野党勢力の存在感はますます失われている Kim Kyung Hoon-REUTERS

<90年代の選挙制度改革で二大政党制を目指したはずだが、それを阻んだのは二分された日本の社会構造だった>

20190702issue_cover200.jpg

ニューズウィーク日本版本誌7月2日号「特集:残念なリベラルの処方箋」に、「リベラルはなぜ衰退したのか?」という記事を寄稿しました。参院選が迫る中で、野党の存在感が薄れたことで日本の民主主義がますます弱っているという危機感から、現在にいたる日本の政治風土について歴史的な考察を含めて論じたものです。

詳しくは記事をお読みいただくとして、本稿では、日本で「二大政党制」がなぜ機能していないのかを考えたいと思います。アメリカの二大政党制はトランプ時代でも一応、機能しています。「一応」というのは、左右対立が激化しているのと、ホワイトハウスと議会の関係が悪すぎるので、健全な政策論議とか、国としての意思決定の能力が低下しているからです。とは言え、それでも対立軸はしっかり機能しています。

日本の場合も、1990年代に始まった選挙制度改革で二大政党制を目指したわけですが、その試みは現時点では、事実上破綻しています。

日本の場合は、アメリカのような「大きな政府か、小さな政府か」といった対立軸、あるいは欧州も含めたユニバーサルな問題としての「開発か、環境か」であるとか「機会の平等か、結果の平等か」といった対立軸が、うまく政策の選択肢として対立軸になっていません。

そうではありますが、1993年からの「細川・羽田政権」、そして2009年からの「鳩山・菅・野田政権」という形で、曲がりなりにも政権交代を経験した歴史はあるわけです。では、この2回の政権交代は、なぜ起きたのでしょうか? そしてこれらの政権交代が起きたのに、なぜ二大政党制が確立しなかったのでしょうか?

90年代の場合は、リクルート事件など「政治とカネ」の問題が自民党への不信になったとか、2000年代の場合は格差社会の問題や、それこそ「消えた年金」問題などもありました。ですから、自民党が政権を失った直接の理由は異なります。また、「細川・羽田政権」と「鳩山・菅・野田政権」の政策は異なっています。

ですが、この2回の政権交代には共通のファクターがあります。

それは、日本経済が大きな困難に直面していたということです。1993年には、それこそバブル崩壊によって社会が大きく動揺していた時期です。また、2009年の政権交代はリーマンショックの渦中で起きたのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

ダライ・ラマ「一介の仏教僧」として使命に注力、90

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強

ワールド

英外相がシリア訪問、人道援助や復興へ9450万ポン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story