コラム

アリアナのタトゥー炎上と日本人の「不寛容」

2019年02月12日(火)15時40分

アリアナは「7つの指輪」という意味で「七輪」というタトゥーを入れたようだ Mario Anzuoni-REUTERS

<日本語は敬語などの表現によって相手との関係性やニュアンスを規定する特性が強く、外国人の話す日本語を聞くときにはそのことを日本人も意識することが必要>

歌手のアリアナ・グランデさんは、新曲『7 rings』の発売を記念して手のひらに「七輪」という漢字のタトゥーを入れた写真をインスタにアップしました。新曲のタイトルを意味する「7つの指輪」を縮めて「七輪」と彫ったということなのでしょう。

ところが、これに対してネット上で「七輪」というのは「日本のバーベキューグリルだ」といった指摘が殺到したようです。するとグランデさんは「七輪」の2文字の下に「指♡」という文字を追加しました。本人サイドとしては、「バーベキューグリルの七輪ではない」という主張をする意図だと思います。

ですが、炎上はさらに激しくなり「文化の盗用だ」とか、「日本語を日本のことをよく知らない人に使ってほしくない」といった批判もあったそうです。結果として、グランデさん本人は「日本に移住しようと思っていたが、日本語のレッスンをやめる」と宣言するに至ったそうです。

この問題については、不寛容なネット民に対する批判も起こっており、「こんなことで日本嫌いにならないで欲しい」というようなメッセージ発信もされているようです。この批判とメッセージ発信については、それでいいと思います。

ですが、私が気になったのはもっと一般的な問題、つまり日本語を学習中の人の日本語について、日本語話者がどう対応するかという問題です。

通常、ある言語を学習していくと、学習するにつれて表現が正確になり、語彙も増えていくことから、その言語の話者とのコミュニケーションはより円滑になっていくはずです。

ですが、日本語の場合は必ずしもそうではありません。例えば、習熟度の低い、従って発音も文法も整っていない段階の日本語学習者に対しては、日本語話者は一般的に好意的です。何かにつけて「日本語上手ですね」とか「どこで勉強したんですか?」と言った褒め言葉が出るのです。

問題は、中級から上級に差し掛かったくらいから始まります。発音も正確になり、敬語の運用もかなり使えるようなレベルになると、突然、日本語話者の姿勢は厳しくなります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米1月住宅建設業者指数37に低下、高価格と金利懸念

ワールド

トランプ氏、ハセット氏を「とどめたい」 FRB議長

ワールド

EUがウクライナ早期加盟検討、当初の権限限定 ロ和

ワールド

最高裁、次回判決日は20日 トランプ関税訴訟など重
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑について野次られ「中指を立てる」!
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 7
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 8
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    122兆円の予算案の行方...なぜ高市首相は「積極財政…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story