コラム

安倍首相の真珠湾訪問は、発表のタイミングもベスト

2016年12月06日(火)12時20分

 このように様々な要素を検討した中での慎重な判断だったと思います。最後に残る課題は、スピーチです。もちろん、2015年4月の米上下両院合同会議でのスピーチや、オバマ大統領の広島でのスピーチの流れの延長でいいと思いますが、できれば中国に対して「中華人民共和国は第二次大戦の相手国ではないけれども日中の30年戦争に関しては、今回の相互献花外交と同様の和解をしっかりやりたい」というメッセージを発してもらいたいと思います。

 それとセットで、「真珠湾で両国犠牲者を悼むことは、太平洋の平和を守るという強い意志の表明で、これに対する撹乱や挑戦は許さない」というメッセージも加え、硬軟一体となった主張として完結性を持たせることがあってもいいでしょう。

【参考記事】TPPを潰すアメリカをアジアはもう信じない

 思えば、真珠湾に始まる第二次大戦の太平洋での戦闘は、アメリカにとって「太平洋の平和」ということが重要な「国のかたち」の一部であるということを、知らしめたのだと思います。孤立を脱して国際連合に加盟したのも、日本との講和や戦後復興に努力したのもその反映で、結果的に日米関係というのは、戦後のアメリカの「国のかたち」の大きな部分に関係しています。

 今回の相互献花外交は、それを再確認する意味、そして、その一方的な変更を許さないという意味で、まさにベストのタイミングになると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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