アメリカとトルコの両政府は、二つの問題の関係を否定している。

しかし、少なくとも結果的には、エルドアンは「コーラン焼却」問題を理由にスウェーデンのNATO加盟に「絶対反対」の姿勢を打ち出し、問題が膠着したタイミングで反対を引っ込め、それによってF-16売却をアメリカに認めさせたことになる。

これはいわば問題をできるだけエスカレートさせ、譲歩を取引材料にする手法といえる。

「EU加盟を望む」は本音か

同じことは、ヨーロッパに関してもいえる。

エルドアンはスウェーデンのNATO加盟を承認するのとほぼ同時に、トルコのEU(ヨーロッパ連合)加盟をヨーロッパに求めた。

トルコはEUの前身EC(ヨーロッパ共同体)の時代から加盟を求めてきた。エルドアンにいわせれば「我々は50年間待ってきた...我々がスウェーデンやフィンランドにそうしたように、今度は彼らがトルコの道を拓く時だ」。

これに対して、ヨーロッパから目立った反応はない。トルコは政府に批判的なジャーナリストや政治活動家の拘禁などで各国から批判を受けてきたからだ。さらに近年では反イスラーム的世論も目立つ。

こうした背景のもと、2017年の世論調査では、EU市民の約3/4がトルコの加盟に反対した。

EU加盟26カ国の賛成を取り付けるのが難しい以上、トルコのEU加盟が近い将来、実現に向かう現実的な見込みはほとんどないとドイツ公共放送は指摘する。

もっとも、そうした反応はエルドアン自身が最もよく分かっていたと思われる。第一、トルコでも以前ほどEU加盟に期待する声は強くなく、2022年の調査ではトルコ人の58.6%がEU加盟に反対していた。

とすると、実現の見込みの乏しいEU加盟を、ヨーロッパが正面から反対しにくいタイミングであえて持ち出したこと自体、エルドアンの作戦とみることができる。つまり、難しいテーマを持ち出し、その後の譲歩を取引材料にするという意味だ。

破綻の淵にあるトルコ経済

その場合、エルドアンがEUに望むのは恐らく経済協力だろう。トルコ経済は破綻の淵に瀕しているからだ。

世界中で物価上昇が進んでいるが、IMF(国際通貨基金)の統計によると、トルコのインフレ率は今年に入ってからの平均で45%にのぼる。戦火の広がるウクライナでさえ20%であることを考えれば、まさにケタ違いだ。

もともとトルコでは2018年から通貨リラが急落し、経済にブレーキがかかってきた。そのきっかけは、アメリカのトランプ大統領(当時)が各国からの輸入品に対する関税を引き上げ、そのなかにトルコも含まれていたことだった。

その結果、2019年にトルコ政府は国内の銀行に81億ドル分のローンを帳消しにさせるといった強引な手法さえとった。

しかし、その後のコロナショックとウクライナ戦争、さらにアメリカの金利引き上げや今年2月のトルコ大地震など、さまざまな条件が重なるなか、リラ安は止まらず、それにつれて輸入品を中心にインフレも進んだ。これに拍車をかけたのが、エルドアン政権の経済政策だった。

あくまで自国のため
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