コラム

年金アジアNo.1のシンガポール――「自助努力」重視でも年金は拡充させる

2019年11月13日(水)18時10分

ところで、シンガポールの年金や社会保障は、永住権をもつ外国人も対象になる。国際的に優秀な人材の奪い合いが激しくなるなか、充実した社会保障は移住希望者にとって一つの判断材料になる。シンガポールの社会保障改革は、この点でビジネス支援にもつながっているのであり、縦割りではない改革の成果といえるだろう。

国家としての意志

もちろん、国によって社会のあり方は異なり、ある国でうまくいっても、それがどの国でも当てはまるとは限らない。また、シンガポールの制度も万能ではない。

しかし、老後2000万円問題で「年金100年安心」のキャッチフレーズも色あせ、国際イベントにエネルギーを割くことばかりが目につく日本の状況を振り返れば、社会情勢の変化に合わせて完全でなくとも改革を続けるシンガポールの精神は見習うべきだろう

いくら昔を懐かしんでオリンピックを開催しようとも、その頃の右肩上がりの社会情勢に戻すことはできないのだから。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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