コラム

緊迫カタルーニャのツイッター大喜利「プッチダモンはどこだ」が面白い

2018年01月29日(月)16時55分

ツイッターに溢れる冗談と「お面作戦」の現実味

そんな中、ツイッター上ではのんきな冗談も流れている。盛り上がっているのは、#OnÉsPuigdemont「プッチダモンはどこだ」というハッシュタグだ。

「リバープールで見たって聞いたぞ」というツイート(上)には、ビートルズのメンバー4人が映る写真のジョージ・ハリスンの顔がプッチダモンに張り替えられている。カタルーニャ人には珍しいストレートヘアのプッチダモンが絶妙に他のメンバーに溶け込み、地元民の笑いのツボにはまった。

他にも、スーツケースに隠れたり、日本で神輿を担いだり、神出鬼没の「プッチダモン情報」で溢れている。

政治家をいじるのが好きなカタルーニャ人らしいツイートでは、スペインのマリアノ・ラホイ首相(右)が内務大臣とひそひそ話をしている実際の写真に、

首相:ひょっとして、プッチダモンは投票箱があった所にいるんじゃない? 
内務大臣:でも、投票箱がどこにあったか分からないんですよ。

という会話を添えて痛烈に皮肉っている。

ジョークはSNS上に留まらず、車の後部ガラスに貼る「子供が乗っています」というステッカーを「プッチダモンが乗っています」にアレンジしたものも現れた。

しかし、さすがの彼も今回の帰国は難しいだろう。自治権を剥奪されたために、カタルーニャ州政府を守るべきはずのカタルーニャ州警察が今はスペイン政府の直轄下にあるだからだ。

自治権があった10月の住民投票の際は、事実上、州警察がスペイン警察から票を投じる市民を守った。独立宣言のときに、カタルーニャ議事堂を封鎖して議会を守護したのも州警察だった。だが今回の議事堂警備においては、州警察はスペイン警察の指揮下に入っており、以前のような独立した指揮系統は保たれていない。

ただし、プッチダモンがひとたびカタルーニャ議事堂に入ることができれば、カタルーニャ議会の議長は、三権分立の原則により、いずれの所属であっても警察官を議事堂に入れない命令を下すことができる。そうなれば多くのカタルーニャの群衆が州政府を守ろうと議事堂へ向かうことが予想される。

現在、プッチダモンの出現に関係なく信任投票が行われる30日の午後3時にプッチダモンのお面を被って議事堂前に集まろうという「私たちみんながプッチダモン」#TotsSomPuigdemontのツイートが広がっている。

プッチダモン本人がお面を被り、群衆に紛れ込んで議事堂に入り込むか。それとも大喜利ネタのように、スペイン治安部隊のシールド付きのヘルメットと盾のフル装備変装で入るのか。あるいは、ヘリコプターやパラシュートで舞い降りるか。

映画のようなシナリオは考えづらいが、時として真実は小説より奇なり。何が起こるか分からない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

森本 徹

米ミズーリ大学ジャーナリズムスクール在学中にケニアの日刊紙で写真家としてのキャリアを開始する。卒業後に西アフリカ、2004年にはバルセロナへ拠点を移し、国と民族のアイデンティティーをテーマに、フリーランスとして欧米や日本の媒体で活躍中。2011年に写真集『JAPAN/日本』を出版 。アカシギャラリー(フォトギャラリー&レストラン)を経営、Akashi Photos共同創設者。
ウェブサイト:http://www.torumorimoto.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 自由取り戻すと

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story