コラム

就活生と企業の「ズレ」を解消する、面接の3つのポイント

2019年03月19日(火)14時25分

仕事理解とは、企業の競争優位性から理解すること

1つ目のポイントは、学生がその会社の仕事を理解していること。当たり前のことのようだが、本当に理解している人は少ない。なぜなら、仕事を表面的にしか見ていないからだ。

企業というのは、同じ業界でも、競合企業と戦い方が違うことが多い。企業は競争優位性を保つために、特徴を出す。その特徴が違えば、仕事に求められるものが違う。そのことまで理解している学生は少ない。

例えば、筆者は新卒でリクルートに入社したが、配属された新卒採用支援の事業部は当時、顧客に対して競合よりも圧倒的に高い価格を提示していた。競合よりも高い商品を売っていたのだ。その金額で契約を獲得するためには、顧客のために脳ミソが千切れるほど考え、社長に会って、自分なりの考えを伝えられなければならない。それは新卒社員であろうと関係ない。

高価格で獲得するために、高付加価値を出し続ける――。そのための仕事というのは、ある意味で過酷である。それは一体、どのような毎日を過ごすことなのか。入社前からそこの理解を持っていなければ、その仕事を理解したことにはならない。

同じく筆者が人事の執行役員をしていたファーストリテイリングで求められるものは、既存のアパレルや流通とはまったく違った。自社で企画し、発注した商品を売り切るビジネスモデルである「製造小売」を成立させるために、店長は全社の商品計画や在庫状況を理解し、自ら考えて自店の商売を作れなければならないのだ。

同社の柳井正氏は「独立自尊の商売人」を求めると言い続けてきたが、なぜそのような仕事内容が求められるのかを理解できなければ、入社後「こんなはずではなかった」と退社してしまうだろう。

また、大規模な防災システムの営業をしている人から聞いた話だが、その仕事では、1年のうちで購入の機運が高まるのは年に2回。3.11の東日本大震災を思い出す時期と9月1日の防災の日前後とのことだ。

その2つのターゲット日に向けて、半年や1年をかけて準備するのだ。無事に成約すればいいが、ダメだった時のショックは相当なものらしい。また翌日から半年単位の地道な営業活動が始まる。このように、1週間、1カ月、半年、1年をどのように過ごすのかにも、その会社ならではの視点による仕事理解がある。

誰とどんな話をするのか。もしも営業であれば、どれぐらいの金額の提案をして、どうやって成約まで持っていくのか。学生は、自分が仕事をしている日常をイメージできるまで、徹底的に調べてほしいし、企業側も徹底的に「事実」を伝えてほしい。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story