コラム

中国で「性風俗」が合法になる日はそう遠くない!

2018年01月04日(木)20時40分

湖南省長沙市のナイトクラブ(写真提供:筆者)

<中国・湖南省で開かれた「夜遊び」産業のイベントは自治体が主催。4000人ものホストを抱え、中国全土でホストクラブをチェーン展開する経営者もいる。中国「性産業」の夜明けが近付いている>

新年快楽! 明けましておめでとうございます。新宿案内人の李小牧です。

2017年12月上旬、私の故郷である湖南省長沙市で「第2回夜会盛典(第2回ナイト・インダストリー・グランドセレモニー)」が2日間にわたり開催された。中国全土、そして香港、台湾、マカオ、韓国、日本から、娯楽産業などナイトエコノミー(ナイトタイムエコノミー)関連の識者、著名人が集結する大型イベントだ。新年早々になんだが、今年最初のコラムではその話をしたい。

この「夜会盛典」に私、李小牧は、僭越ながら日本代表として出席した。初日のトリという重要なポジションを任され、新宿・歌舞伎町の現状と日本のナイトエコノミーの強みについて語ってきた。1988年に来日して以来ずっと歌舞伎町を拠点にしてきた、まさに「ナイトエコノミーの伝道師(笑)」たる私にとって、何時間でも話し続けられそうなテーマだ。

lee180104-2.jpg
lee180104-3.jpg

大役を担い、日本のナイトエコノミーを大いに語ってきた(写真提供:筆者)

聴衆は、合法と違法のラインがはっきり線引きされている日本のナイトエコノミー事情、そして夜の街から選挙に立候補した私自身の体験に聞き入っていた。

私が講演した翌日、中国カラオケ娯楽協会会長の講演もあったのだが、わずか20分の講演の間に5回も私の名前を出した。いかに政府と折り合いをつけるかという点で、私の歌舞伎町での経験がきわめて重要だと感じ入ったらしい。

さて、会場となったのは長沙市音楽庁だ。2015年に完成したばかりの真新しい立派なホールである。この場所が使えたのも、実はイベントが湖南省文化庁、長沙市政府という自治体が主催者になっているため。これには隔世の感を覚えた。

lee180104-4.jpg

「第2回夜会盛典」の会場となった長沙市音楽庁(写真提供:筆者)

湖南省はかつて「洗脚城」という異名を持っていた。「洗脚」とはフットマッサージの意味だが、その多くは陰で性風俗サービスを提供していた。主要産業が農業で人口が多い湖南省では、仕事が見つからない女性が働く性風俗店がずらりと並んでいたのだ。

性風俗も立派な仕事だと私は考えるが、政府は取り締まりを強化し、北京五輪の前には大半の店が閉店に追いやられている。今でも上海市や広東省のカラオケ店(ご存じの人もいると思うが、中国で「カラオケ店」といえば性風俗店のこと)で働く女性には湖南省出身者が多い。

中国でも、ホストクラブの主な顧客は風俗嬢や社長の愛人

北京五輪から約10年が過ぎた今、今度は政府が旗振り役となってナイトエコノミーの振興に努めている。もちろん性風俗はまだ違法ではあるが、大変な変わりようだ。イベントに参加した企業家たちも、いかがわしい人間ではなく、中国産業界を代表するリーダーとして尊敬を集めている。

例えば、中国全土に展開するホストクラブ・チェーンの経営者。配下には4000人ものホストがいるというから驚きだ。「中国にホストクラブがあるのか?」と驚かれる人もいるだろうが、都市部では日本人以上に豊かな富裕層、中産層がごろごろいるのだから、日本と同じニーズがあるのは当然だ。ちなみにホストクラブの主な顧客は風俗嬢や社長の愛人だという。この点でも日本と変わらない。

また、夜には長沙市のクラブ経営者に誘われて市内のいくつかのクラブを参観したが、きわめてゴージャスな内装(!)と、人々の洗練されたファッションに圧倒された。ちょっと前までは「中国はダサい」と言ってもあながち間違いではなかったが、今では日本と同じかそれ以上かもしれない。

lee180104-5.jpg

湖南省長沙市のナイトクラブ(写真提供:筆者)

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルとパレスチナの「長い悪夢」終わった、トラ

ワールド

ノーベル経済学賞、技術革新と成長の研究 トランプ政

ワールド

イスラエル首相、ガザ巡るエジプト会合に出席せず

ワールド

人質と拘束者解放、ガザ停戦第1段階 トランプ氏「新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 7
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 10
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story