コラム

不名誉な「化石賞」の常連となった日本...深刻すぎる化石燃料「依存症」の理由は、いったい何なのか?

2023年12月05日(火)19時44分

「現在、石炭に続いてLNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている。日本からの支援は必要だが、環境汚染はだめだ。バングラデシュのような人口密度の高い国で環境汚染が起これば大惨事になる。日本には持続可能でグリーンな再エネプロジェクトに資金を提供してほしい」と訴える。

COP28

バングラデシュの市民団体のシャリフ・ジャミル氏(同)

「最初に石炭プラントを設置した時、混焼の話はなかった。それが今になって出てきた。アンモニアはとても汚い燃料なので私たちには必要ない。バングラデシュは未開発の自然エネルギーの『金脈』だ。1年間を通じて太陽光が降り注いでいる。私たちは日本が化石燃料によるエネルギー拡大を行わないよう真の友好関係を望んでいる」とジャミル氏はいう。

日本の気候変動政策を歪める業界団体

国際環境NGO 350.orgジャパンの伊与田昌慶氏は「日本は世界で汚い石炭とのアンモニア混焼、危険な原子力、二酸化炭素回収・貯留技術のCCS/CCUSといったまやかしの解決策を売り込む商人の役割を果たしてきた。岸田首相がG7(主要7カ国)広島サミットで合意された『化石燃料フェーズアウト』に言及しなかったことも理解に苦しむ」と語る。

日本の気候変動対策がここまで遅れた理由はいったい何なのか。ロンドンを拠点にする世界的な非営利シンクタンク「インフルエンスマップ」が2020年8月に発表した報告書「日本の経済・業界団体と気候変動政策」で気候変動・エネルギー政策に対する日本の経済・業界団体の立場を分析している。

それによると、業界団体を通じて気候変動・エネルギー政策への働きかけを徹底して行っていたセクターは国内総生産(GDP)の1割にも満たない鉄鋼、電力、自動車、セメント、電気機器、石油・石油化学、石炭関連業界だった。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の提唱する政策と比較すると、こうした業界団体からの働きかけは概して後ろ向きだ。

業界団体の中で最も後ろ向きで激しい働きかけを行っていたのは日本鉄鋼連盟と電気事業連合会。これに対してGDPの7割を超える小売、金融サービス、物流、建設、不動産を代表する業界団体は働きかけをほとんど行っていない。さらにイオンをはじめ数多くの企業が事業の電力を100% 再エネで賄うという明確な目標を掲げていた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国、北朝鮮に軍事境界線に関する協議を提案

ワールド

ドイツ財務相「貿易競争には公正な条件が必要」、中独

ビジネス

英生保ストレステスト、全社が最低資本要件クリア

ビジネス

インド輸出業者救済策、ルピー相場を圧迫する可能性=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story