コラム

「裏の動機があるはずと詮索する人も...」ウクライナ戦闘地域の目前の村に、支援活動を続ける女性

2023年07月07日(金)18時21分

ヘルソン州への支援活動では倉庫に物資を届けた。支援物資を集配する倉庫の場所が特定されるとロシア軍が意図的に砲撃してくるため、倉庫の外観や周囲の樹木が分かるような撮影は禁止された。ピリピリとした緊迫感が伝わってくる。倉庫の中には食料や衣服、衛生用品のほか、浸水した家屋をきれいにするための洗浄液が積み上げられていた。

ヘルソン市で高齢者を支援する地域社会サービスセンターのディレクターを務めるイワノヴナさんは洪水が数日間続いた後、夫とともに浸水しなかった友人宅に避難した。「ダムが爆破された直後、水位がどんどん上昇して怖かったです。助かって神様に感謝します。屋根の上に避難しているお年寄りもいました」と話した。

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浸水した様子を語るイワノヴナさん(左、6月に筆者撮影)

「人生のすべてに理由があるはず」

支援物資を届けたFFUのオルガさんに対し、イワノヴナさんは「関心を持ってくれている人々に感謝します。すべてが水浸しで、毛布も枕もなく、食べ物もありませんでした」と語った。イワノヴナさんは現在、水が引いた自宅に戻っている。ロシア軍の砲弾が飛んでくる前線に近い地域への支援を続けるオルガさんは常に自分に「なぜ」と問いかけている。

「人生のすべてに理由があるはずと思っています。 目標がはっきりしてから行動を開始する必要があります。 戦時の人道支援はかなり複雑なプロセスです。内面の力が求められます。しかし理由が分かれば、自分の仕事を継続することが容易になります。自分の努力が人々の生活の向上につながることを私は理解しています」とオルガさんは語る。

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ヘルソン州の倉庫に届けられたFFUの支援物資(6月、筆者撮影)

「私たちの支援を受けた人々がより幸せになるのを目の当たりにする、 それが私のモチベーションになっています」というオルガさんだが、ミッションの後、しばらく独りになる時間が必要だと打ち明ける。「ミッションの準備には多くのコミュニケーションを伴い、単純なプロセスではありません」

「ミッションそのものにおいても、援助を受ける人々と直接コミュニケーションをとります。その人たちは自分の人生を私に語ります。常に破壊された村や家屋、建物を目の当たりにします。それは確実に私の精神衛生に影響を及ぼしています。そのためミッションを終えた後、自分の力を取り戻すため、しばしば独りになることが必要になります」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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