コラム

ミャンマー軍の兵器製造に、日本企業の精密機械...北朝鮮など制裁対象国の「抜け道」とは

2023年01月17日(火)19時01分
ミャンマーのクーデターへの抗議デモ

2021年のクーデターへの抗議活動を、軍は厳しく弾圧した(2021年2月) REUTERS/Stringer

<厳しい輸出管理が行われているはずのミャンマーで、ツガミ製精密自動旋盤など13カ国の企業の機械や部品が使われていることが判明>

[ロンドン]国連の元特別報告者らによる「ミャンマーのための特別諮問評議会(SAC-M)」が16日、少なくとも13カ国の企業の工作機械や部品がミャンマー国軍の兵器製造に使われていると報告した。ミャンマーに対する西側主導の制裁が実施されているにもかかわらず、米国、ドイツ、フランス、日本、韓国、台湾の製品や部品がリストに含まれていた。

『死のビシネス:ミャンマー国軍の兵器製造のサプライチェーン』と題したSAC-Mの報告書では、ミャンマーへのライセンス生産と技術移転が確認された企業が本社を置く国としてシンガポール、イスラエル、韓国、中国、ウクライナ。原材料の供給国として中国、シンガポール。部品の供給国としてインド、最終製品の供給国としてロシア、インドを列挙している。

機械・技術の供給国としてドイツ、日本、台湾、ウクライナ、米国、オーストリア、フランス、イスラエルを挙げる。日本企業は自動旋盤大手で精密工作機械製造・販売のツガミ(東京)で、兵器製造に使われていたのは最新の制御技術を用いたCNC精密自動旋盤のBO325-II。情報提供者はミャンマーの旧武装勢力メンバーで、SAC-Mに証拠写真があるという。

筆者がSAC-Mを通じて確認した3枚の写真(内部告発者を保護するため非公開)によると、2台のBO325-IIの奥に工作機械メーカーのTAKISAWA(岡山市、旧滝沢鉄工所)の連結小会社、台灣瀧澤科技股份有限公司のCNC旋盤、NEX-108とみられる3台が工場内に設置されていた。

ツガミ関係者は筆者の取材に「北朝鮮やミャンマーなどへの輸出管理は経済産業省の安全保障貿易管理に基づき、厳格に行っている。わが社の製品がミャンマーに輸出されることはあり得ない。ただ、昔の日本製工作機械はアジアでぐるぐる回っており、そこまで完璧に管理できないが、一般論として10~15年使えば工作機械は使用できなくなる」と語る。

安全保障輸出管理は冷戦下のココムより厳格

国際輸出管理レジームに参加するホワイト国では冷戦下の対共産圏輸出統制委員会(ココム)以上に厳しい管理を行っている。しかし悪意ある者が巧妙な抜け道を使って第三国経由で禁制品をミャンマーなどの制裁対象国に持ち込んでいたとしたら、「企業がいくら輸出管理に神経を尖らせたとしても100%防ぐのは難しい」とツガミ関係者は打ち明ける。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の集計によると、昨年、北朝鮮が発射したミサイルは99発にのぼった。過去最も多かった年はドナルド・トランプ米大統領(当時)が北朝鮮に対し「炎と怒りに直面する」と警告を発した2017年の24発。昨年、金正恩朝鮮労働党総書記はそれより4倍以上も多いミサイルを発射していた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米1月求人件数、694.6万件で予想上回る 採用は

ワールド

米国防長官、イラン報道でCNNを批判 トランプ氏朋

ビジネス

米GDP、25年第4四半期改定値0.7%増 速報値

ワールド

EXCLUSIVE-イラン、インド船籍ガスタンカー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 9
    北極海で見つかった「400年近く生きる生物」がSNSで…
  • 10
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story