コラム

NATO加盟で腹をくくったフィンランド、マリン首相はこうして「鉄の女」になった

2022年05月14日(土)15時28分

「自分の年齢や性別について考えたことはない」

パン屋で働き、高校時代はお小遣い稼ぎで雑誌を配達した。ソコスのレジ係として働いたのも家庭が貧しかったからだ。「平均的な生徒」(中学時代の教師)だったマリン氏は家族で初めて高校を卒業し、大学に進学した。タンペレ大学で行政学を学び、学士と修士を修了した。社会の役に立ちたいと政治に目覚めたマリン氏のサクセスストーリーが始まる。

プロサッカー選手と16年間交際し、20年に結婚。「フィンランドの行き届いた福祉、教育制度がなければ、私はキャリアで成功する機会を得ることはできなかった。同性愛家族で育ったので、平等と人権の両方を大切にしている」「自分の年齢や性別について考えたことはない。政治に関わるきっかけとなった社会問題に集中している」という。

マリン氏は、男女が平等に介護責任を負うことを奨励する政策、家庭内暴力の取り締まり、男女間の賃金格差是正、貧困層や移民の子供たちの教育改善策を盛り込んだ「平等プログラム」に取り組む。彼女のリベラルさに「この国が経験した中で最も左寄りの首相」と保守派から呼ばれたこともある。

首相就任時、マリン氏の娘は生後22カ月。授乳中の姿やパスタのレシピをインスタグラムにアップする「インスタ世代」だ。20年には雑誌の写真撮影で素肌にジャケットを着てポーズをとり、センセーションを巻き起こした。昨年は新型コロナウイルス感染者と濃厚接触したあとナイトクラブに出掛けて謝罪。検査の結果、自分は陰性だった。

日本を訪れたマリン氏は11日、2時間以上にわたって岸田文雄首相と会談、ワーキングディナーを行った。岸田氏は戦略的パートナーとして両国の関係をさらに強化したいと述べると、マリン氏は「ルールに基づく秩序を支持する両国の関係を一層強化していきたい」と応じた。国を守るのに右も左もない。果たして日本はマリン氏から学ぶことができたのだろうか。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米輸入物価、2月は約4年ぶり大幅上昇 中東紛争でエ

ワールド

トランプ氏、AI諮問委にメタやエヌビディアCEOら

ビジネス

米経常赤字、25年第4四半期1907億ドルに縮小 

ビジネス

一時的インフレ上振れでも緩やかな引き締め必要な可能
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 4
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 5
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 6
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 7
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 8
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 9
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story