コラム

余裕の日本 アストラ製ワクチン使わないなら即座に途上国に放出を

2021年05月22日(土)20時36分

インド株の脅威が迫り、アストラゼネカ製も含むワクチン接種を急ぐイギリス人  Baz Ratner-REUTERS

英ではインド変異株の占有率が早くも50%を超え、ますますワクチン接種が加速するが、日本はどうか

[ロンドン発]英緊急時科学的助言グループ(SAGE)は21日、英変異株より最大で50%も感染力が強いとされるインド変異株(B.1.617.2)が感染者1人から新たに1.64人(実効再生産数)に感染し、5月中旬にすでに英国内の"占有率"が50%を超えていると分析する報告書を公開した。

4月初めにはゼロだっただけに恐ろしいスピードでインド変異株が拡大していることが分かる。3カ月以上に及ぶロックダウン(都市封鎖)やワクチン展開で通常株より感染力が最大で70%も強い英変異株の勢いは完全に衰えたとは言え、インド変異株の感染者は1週間もしないうちに倍々ゲームで増え、あっという間に3千症例を超えた。

kimura20210522192401.jpg

イギリスで1回目の接種を済ませたのは大人の70%超に当たる3751万8614人。このうち2165万9783人が2回目も済ませた。新たな入院患者は横バイ、1日当たりの死者は1人か2人という日も出てきたが、用心するに越したことはない。イギリスは変異株の拡大を調べるため陽性検体のゲノム解析だけでなく全国の70%の地域で下水もモニターしている。

ボリス・ジョンソン英首相とマット・ハンコック保健相はワクチンがインド変異株を含むすべてのコロナウイルスに有効だとの確信は強まっていると力を込める。インド変異株の感染拡大を抑え込むため50歳以上への2回目の接種を加速させるとともに、インド変異株が流行する地域では2度の接種期間を12週間から8週間に短縮した。

秋に予定される3回目のブースターワクチンについても英サウサンプトン大学で2回接種を済ませた数千人を対象に世界初の臨床試験を開始する。すでに7候補が出そろった。イギリスはコロナ危機をきっかけに政治と科学、大学、製薬会社、NHS(国民医療サービス)、チャリティーが一体となって「科学の超大国」を目指し始めた。科学予算も倍増する。

日本はアストラ製承認すれど当面は使用せず

日本の厚生労働省は21日、米モデルナ製と英アストラゼネカ(AZ)製のワクチンを正式に特例承認した。しかしAZ製ワクチンについては血小板減少を伴う血栓症の副反応が報告されているとして当面使用を見送った。共同通信によると専門家から「イギリスでかなりの接種実績があり、効果も確認されている。選択肢として排除すべきでない」との指摘が出た。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

米で中国対抗半導体法が成立、バイデン氏署名 「一世

ワールド

中国ケーブル最大手、ZTEのイラン取引で仲介役の疑

ワールド

クリミア半島のロシア軍基地近くで爆発、攻撃でないと

ビジネス

米労働生産性、第2四半期4.6%低下 前年比は過去

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:世界が称賛する日本の暮らし

2022年8月 9日/2022年8月16日号(8/ 2発売)

治安、医療、食文化、教育、住環境......。日本人が気付かない日本の魅力

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ドラ「ちむどんどん」、沖縄県民が挙げた問題点とは

  • 2

    「これほど抗うつ効果が高いものは思いつかない」 世界的な著名精神科医が指摘するある『行動』とは

  • 3

    【動画】6つの刃でアルカイダ最高指導者の身体を切り裂いた「ニンジャ爆弾」

  • 4

    台湾有事を一変させうる兵器「中国版HIMARS」とは何か

  • 5

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

  • 6

    【映像】華麗なるスライディングを披露するゴリラ

  • 7

    【動画】プーチン「影武者」説を主張する画像と動画

  • 8

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリ…

  • 9

    中国でミャンマー大使が急死 過去1年で中国駐在大使…

  • 10

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホット…

  • 1

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリゲーター

  • 2

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホットコーヒーを浴びせる

  • 3

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

  • 4

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ド…

  • 5

    「これほど抗うつ効果が高いものは思いつかない」 世…

  • 6

    冬に向けて「脱ロシア化」準備中──じわじわ効果を上…

  • 7

    中国ロケット長征5号Bの残骸、フィリピン当局が回収 …

  • 8

    お釣りの渡し方に激怒、女性客が店員にコーヒーを投…

  • 9

    【動画】ノリノリでピザを投げつけるケイティ・ペリ…

  • 10

    【動画】6つの刃でアルカイダ最高指導者の身体を切り…

  • 1

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリゲーター

  • 2

    【動画】黒人の子供に差別的な扱いをしたとして炎上したセサミプレイスでの動画

  • 3

    【空撮映像】シュモクザメが他のサメに襲い掛かる瞬間

  • 4

    「彼らは任務中の兵士だ」 近衛兵から大声で叱られた…

  • 5

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホット…

  • 6

    【映像】視聴者までハラハラさせる危機感皆無のおば…

  • 7

    【動画】近衛兵の馬の手綱に触れ、大声で注意されて…

  • 8

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

  • 9

    メーガン妃はイギリスで、キャサリン妃との関係修復…

  • 10

    【動画】珍しく待ちぼうけを食わされるプーチン

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中