コラム

韓国における日本製品不買運動の現状──年齢、支持政党、地域により大きな差が...

2019年11月06日(水)11時15分

但し、ユニクロが韓国進出15周年を記念して10月3日から最大で半額になる感謝セールを実施してから、店舗には買い物客が押し寄せ、オンラインストアでは一部の人気商品が売り切れるなど、少し回復の気味を見せ始めた。しかしながら、ユニクロがYouTube上で公開したCM動画の表現をめぐって韓国で批判が寄せられており、「不買運動」を超えて、韓国から出て行けという「退出運動」まで起きることになった。問題になったCMは、13歳の女性が98歳の女性に「How did you used to dress when you were my age?(私の年齢の時は、どんな格好をしてたの?)」と尋ねると、98歳の女性が「Oh my god, I can't remember that far back(それほど昔のことは覚えていない)」と答える。但し、なぜか韓国語の字幕は「80年前のことは覚えていない」と意訳されたものがつけられていた。80年前の1939年は、日本の朝鮮半島統治の後期に当たる時期であるので、このコマーシャルの字幕は韓国で猛烈な反発を招き、韓国国内のユニクロ店舗前で抗議デモが行われた。

日韓両国にとってマイナスの影響が

このような不買運動は日韓両国の経済にマイナスの影響を与えている。9月の日本の韓国への輸出額は、前年同月に比べて15.9%減り、貿易収支の黒字額も25.5%減少した。半導体の製造などに使われる化学製品3品目に関して日本政府が韓国への輸出規制を厳格化したことにより関連製品の輸出ができなかったことや、韓国での日本製品の不買運動が影響を与えた可能性が高い。さらに、米中貿易戦争の長期化などの影響もあり、9月の全体輸出額は5.2%減少した6兆3685億円、輸入額は1.5%減少した6兆4915億円にとどまった。
この結果輸出は10カ月連続、輸入は5カ月連続減少している。

韓国も状況は同じである。9月の韓国の日本への輸出額は、前年同月に比べて6.0%減り、輸入額も8.6%減少した。また、韓国政府が11月1日に発表した10月の全体輸出額は、前年同月に比べて14.7%減少し、11カ月連続でマイナスとなった。これは2016年1月以来の約4年ぶりの大幅減少である。中国向けの輸出が減少したことや半導体価格が下落したことなどが影響を与えている。

一方、韓国からの観光客が多かった九州、大阪など日本の地域の被害も拡大している。10月2日に釜山海洋水産庁が発表した資料によると、釜山と、長崎県の対馬市、大阪市、山口県の下関市、福岡市の4カ所を結ぶ国際旅客船の9月の乗客数は前年同月に比べて80%も減少した約2万1千人に過ぎなかった。韓国人観光客の急減に対し、対馬市の比田勝尚喜市長は、新たな観光客誘致に向けた宿泊施設整備費や宣伝費への財政支援を要請した状態である。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイスUBS、1万人規模の追加削減の可能性=報道

ワールド

米最高裁、出生地主義を見直す大統領令の合憲性審理へ

ワールド

中国に強く抗議し再発防止を申し入れ、レーダー照射で

ビジネス

ネトフリのワーナー買収、米与野党議員から独禁法違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story