自由貿易協定をめぐるこうした原理原則に照らして、これまでの個別の議論を振り返ってみると、全く論点が定まっていないことが分かる。

まずTPPで大きな問題となった国内農業保護だが、国内農業が打撃を受けるので参加すべきではないというのは本末転倒な議論といってよいだろう。そもそも日本は貿易で莫大な利益を上げているからこそ、こうした協定について検討する価値がある。悪影響を受ける産業にどれだけの支援ができるのかというのが本来の論点だったはずであり、むしろ農業に対する支援策については十分に議論が尽くされていない印象だ。

一方、RCEPで目に付いたのは中国脅威論ばかりだ。中国は大国になったとはいえ、現時点においてアジアで最も高い競争力を持っているのは日本であり、RCEPにおける最大の受益者は日本である。むしろ中国からすれば、日本企業による輸出攻勢を心配しているくらいだろう。

中国がRCEPを軸にアジア経済の主導権を握ろうとしているのは事実であり、だからこそ多少自国に不利でも協定の取りまとめを主導した。本来、その役回りは日本が担うべきだったはずである。

<本誌2020年12月15日号掲載>

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