コラム

RCEPで本当に得をするのは日本──中国脅威論は論点がズレている

2020年12月09日(水)12時05分

自由貿易協定をめぐるこうした原理原則に照らして、これまでの個別の議論を振り返ってみると、全く論点が定まっていないことが分かる。

まずTPPで大きな問題となった国内農業保護だが、国内農業が打撃を受けるので参加すべきではないというのは本末転倒な議論といってよいだろう。そもそも日本は貿易で莫大な利益を上げているからこそ、こうした協定について検討する価値がある。悪影響を受ける産業にどれだけの支援ができるのかというのが本来の論点だったはずであり、むしろ農業に対する支援策については十分に議論が尽くされていない印象だ。

一方、RCEPで目に付いたのは中国脅威論ばかりだ。中国は大国になったとはいえ、現時点においてアジアで最も高い競争力を持っているのは日本であり、RCEPにおける最大の受益者は日本である。むしろ中国からすれば、日本企業による輸出攻勢を心配しているくらいだろう。

中国がRCEPを軸にアジア経済の主導権を握ろうとしているのは事実であり、だからこそ多少自国に不利でも協定の取りまとめを主導した。本来、その役回りは日本が担うべきだったはずである。

<本誌2020年12月15日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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