最新記事

オーストラリア

オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声

Chinese Company Buys Australian Island Then Bans Australians From It

2020年12月2日(水)18時00分
バシット・マームード

オーストラリアの中国に対する警戒感は高まるばかり(写真はシドニーの中国人観光客、2018年) Edgar Su-REUTERS

<楽園のような島を買ってビーチや滑走路へのアクセスさえ禁じたのは、中国人専用の観光地にするためか?>

オーストラリアの島の土地を買い上げた中国の不動産開発業者が、オーストラリア人の立ち入りを禁じて、地元住民や観光客が不満を募らせている。

問題のケズウィック島は、人気の観光スポットとなる可能性を秘めた島だが、チャイナ・ブルームという企業がその一部を買った。島の住民は、同社が楽園のようなこの島の一部地域への立ち入りを禁じていると訴えている。住民によればチャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという。

島に住む複数の家族はさらに、チャイナ・ブルームはこの島の観光業を死に追いやろうとしていると訴える。住民が所有する物件をAirbnbで観光客に貸し出したり宣伝したりすることも禁じられたというのだ。

「彼らは、オーストラリア人を島から追い出したいのだと思う」と、元住民のジュリー・ウィリスは、オーストラリアのニュース番組「カレント・アフェア」に語った。「彼らはこの島を、中国人向け観光専用の島として使いたいのだろう」

インフラ投資を歓迎する当局

ウィリスとパートナーのロバート・リーによると、2人が抱えた問題はさらに深刻だったという。というのも、2人は2月になって、それまで6年間にわたって借りていた不動産から3日以内に退去するようチャイナ・ブルームから言い渡されたからだ。2人は物件を購入しようとしたが、チャイナ・ブルームから、物件に不具合が生じた場合の修理にあてる費用として、保証金10万オーストラリアドル(約770万円)を要求された。

ウィリスはこう語る。「彼ら(チャイナ・ブルーム)は、私たちが物件を買うのをあきらめるよう仕向けていたのだと思う。私たちにここにいて欲しくないのだ」

ケズウィック島は、ウィットサンデー諸島に属する島の1つで、オーストラリア北東部にあるクイーンズランド州の海岸線の中ほどの沖合に位置する。

ケズウィック島の大部分は国立公園に指定されている。クイーンズランド州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームと住民の間に存在するいかなる問題も、解決されることを望んでいると述べた。

広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘。少数の住民が申し立てている問題の大半は当事者同士で解決されるべき問題だと語った。

中国とオーストラリアの間では最近緊張が高まっている。中国政府当局者が、オーストラリア軍の兵士がアフガニスタン人の子どもを殺そうとしているように見える偽画像をツイートした件では、オーストラリア政府が中国政府に謝罪を要求している。

オーストラリアは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源に関する調査を要求する動きの先頭に立っているほか、中国政府によるオーストラリアへの内政干渉にも神経をとがらせており、両国の関係は悪化の一途をたどっている。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中