コラム

そろそろ価値観の転換が必要。インフレ経済はすでに始まっている

2018年05月29日(火)12時00分

公共料金のや配送料金の値上げは、今の日本経済を象徴する出来事 mantinov-iStock

<日本で「2つのインフレ」が同時に起こる可能性もある。そうなった場合、日銀のコントロールは極めて難しい状態に...>

今年に入って、多くの製品やサービスで値上げが行われている。これまでの日本経済はデフレ一色というイメージだったが状況は大きく変わった。原材料費の高騰に加え、深刻な人手不足から労働コストが上昇しており、いつインフレ経済に転じてもおかしくない。

もっとも、デフレ脱却=好景気という話ではなく、むしろ景気が伸び悩む中での物価上昇となる可能性もある。いずれにせよ、従来の価値観は徐々に転換していく必要がありそうだ。

インフレには2つの種類がある

東京電力や東京ガスなどエネルギー各社は、3月から3カ月連続で値上げを実施した。原油価格と液化天然ガス(LNG)価格が大きく上昇したことが主な要因である。

基本インフラという点では運送会社の値上げも経済への影響が大きい。

昨年のヤマト運輸の値上げに続き、今年は日本郵政が「ゆうパック」の値上げに踏み切っている。ネット通販各社との個別契約内容は不明だが、通販会社が利用者から徴収する配送料金が軒並み値上げになっていることを考えると、大口価格も上昇した可能性が高い。かつてのように安価に配送できる時代は終わったと考えるべきだろう。

電気、ガス料金の値上げと配送料金の値上げは、今の日本経済を象徴する出来事といってよい。その理由は、典型的なコストプッシュ・インフレの要素が揃っているからだ。

説明するまでもなく、インフレというのは物価が上昇することだが、インフレには大きく分けて2つの種類がある。ひとつはディマンドプル・インフレ、もうひとつはコストプッシュ・インフレである。

ディマンドプル・インフレは、財政政策や金融政策などによって総需要が拡大し、それに伴って物価が上昇するタイプのインフレを指している。

需要が拡大し、モノやサービスが足りなくなるので、企業は値上げを実施し、その結果として経済全体の物価が上がっていく。需要サイドを主な要因としているのでディマンド(需要)プル・インフレと呼んでいる。このタイプのインフレは、景気が過熱している時に起こりやすいという特徴がある。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルおおむね下落、米景気懸念とFRB

ビジネス

ステーブルコイン普及で自然利子率低下、政策金利に下

ビジネス

米国株式市場=ナスダック下落、与野党協議進展の報で

ビジネス

政策不確実性が最大の懸念、中銀独立やデータ欠如にも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story