コラム

トランプ退場で歴史は再び明るい未来へ進歩を続ける、のか

2021年01月06日(水)16時30分

世界は、高い生活水準と権利の双方を兼ね備えた北欧諸国をトップに、複雑な社会を扱いかねているEU諸国、民主主義の枠組みを持っていてもそれがカネの力でゆがめられているアメリカ、かなりの水準に達していても実は官僚の力が大き過ぎる日本、生活水準は上がってきたが権利を欠く中国やロシア、経済力も権利・意識もまだまだの国々に凝固してしまった。それぞれの歴史が生んだ現在の社会が障壁となって、「進歩」は止まった感がある。

テクノロジーの進化で事態は少し改善されるかもしれない。政府と個人がスマホで直結したことの意味は大きい。中国やロシアでは、これを市民の行動監視に用いているが、市民がこのシステムを乗っ取り政府を突き上げることもできるだろうからだ。

進歩とは、自分、そして他人が自由・権利を享受できること、そしてできるだけ多くの人がまともな生活水準を享受できる社会をつくることだと筆者は思う。やるべきこと、できることはたくさんある。トランプも退場する。各国社会の現状に見合った「進歩」への処方箋を書くべき時だ。

<2020年12月29日-2021年1月5日号掲載>

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12月29日/1月5日号(12月22日発売)は「ISSUES 2021」特集。ウィズ・コロナ/アフター・トランプの世界を読み解く。ジャレド・ダイアモンド、イアン・ブルマほか

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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