コラム

ご近所でも見られる移民大挙の現実

2015年08月03日(月)16時55分

■祖国よりも格段に稼ぎがいい

 とにかく、この国には多くのイギリス人以外の人々がいるのは分かってもらえるだろう。これが典型的な光景だと言うつもりはない。僕の住む通りにしたって、イギリス人が少数派になったわけでは、もちろんない。でも、異例の光景とも言えないだろう。

 僕の子供時代、ロンドンや他の大都市や小規模都市には、特定の国から来た人々が大勢集まる特定の地域がいくつもあった。たとえばイーストロンドンにはバングラデシュ人がたくさんいたし、ブラッドフォードにはパキスタン人が集っていた。でも今は、さまざまな国から来たさまざまな人が、イギリス中の街や村にあふれている。

 時々僕は、彼らがなぜここに来たのだろうと疑問に思う。結局のところ、僕は子供時代にイギリスがあまり素晴らしい国とは思えず育ったからだ。

 僕の隣人たちを例にとると、明らかな素性がいくつか見えてくる。この通りのポーランド人男性たちはどちらも働いていて、朝早くに家を出て夜6時前に帰宅する。これはつまり間違いなく、彼らが肉体労働者であることを意味する。「ポーランド人の配管工」とはよく言われることだけれど、ポーランド人は腕のいい技術者として母国よりいいお金が稼げるからイギリスで働いていることが多い。彼らはEU市民として自由にイギリスに渡ることができるし、実際多くがイギリスに流入している。僕の家から5分以内のところに2軒のポーランド系の店があるし、イギリスのカトリック教会の礼拝に来るのはイギリス人よりポーランド人のほうが多いというのはよく聞く話だ。

 ポーランド人以外の東欧出身者(たとえばルーマニア人)は単純労働に就いている場合が多い。果樹園の収穫作業やホテル従業員、清掃員などだ。イギリス経済は安価な労働力に大きく頼っている。繰り返しになるが、彼らの賃金は低いが母国の稼ぎに比べればかなりいいのだ。信じがたいことだけど、以前にBBCで見たリンゴ園で働くルーマニア人の男性の話によれば、祖国で歯科医として働くよりもイギリスの果樹園に勤めたほうが3倍以上の給料が得られるのだという。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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