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FRB議長、待ちの姿勢を再表明 「経済安定は非政治的方法で」

2025年07月02日(水)03時20分

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は1日、ポルトガルのシントラで開催中の欧州中央銀行(ECB)フォーラムのパネル討論会で、関税がインフレに与える影響を見極めるために「待つ」姿勢を改めて表明した。2022年6月撮影(2025年 ロイター/Sarah Silbiger)

Michael S. Derby Francesco Canepa Howard Schneider

[シントラ(ポルトガル)/ニューヨーク 1日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は1日、ポルトガルのシントラで開催中の欧州中央銀行(ECB)フォーラムのパネル討論会で、関税がインフレに与える影響を見極めるために「待つ」姿勢を改めて表明した。

パウエル議長は利下げを巡り「われわれは幾分時間を取っているだけだ」とし、「米経済が堅調である限り、待ち、さらに詳しく知り、その影響がどうなるかを見極めることが賢明な対応と考える」と述べた。

「経済成長、労働市場はともに堅調で、失業率は依然として歴史的に低い水準にある。非常に厳しい金融政策に苦しんでいるような経済ではない」とした。

FRBがどの程度待つ必要があるかはまだ明らかでない。FRBは昨年9月から利下げを続けてきたが、12月に政策金利を現在の4.25─4.5%にした後、利下げを停止した。トランプ大統領は利下げしないのは政治的動機によるものだと批判している。

パウエル氏はその理由を隠さず「関税の規模を見て、政策金利を据え置いた。関税表明を受けて米国のインフレ予想が大きく上昇した」と述べた。

同時に、足元の政策見通しでは、FRB当局者の大多数が依然として年内後半の利下げを予想しており、年内残り4回の連邦公開市場委員会(FOMC)のいずれも利下げの選択肢から外れていないとの見方を示した。

「(利下げ決定は)データ次第であり、会合ごとに対応していく」と改めて表明。「いずれの会合も除外することはない。データがどのように推移するかにかかっている」と述べた。

トランプ大統領が設定した「相互関税」上乗せ分の一時停止期限が7月9日に迫るほか、3日発表予定の6月の米雇用統計など、今後の経済データが政策判断の鍵を握るとした。

トランプ大統領からの利下げ圧力を巡り、パウエル議長は「インフレと雇用の目標に100%集中している」と強調し、聴衆のほか、パネルで同席した欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)など中銀幹部らからも拍手喝采を浴びた。

中央銀行の独立性がインフレ抑制に不可欠であるとの認識が改めて示された。

パウエル議長は、トランプ大統領が今後選ぶであろう後継者の誰に対しても「FRBは全ての人々の利益のために、金融・経済の安定を実現しようとしている。これを成功させるには、完全に非政治的な方法で実行する必要がある。FRBはどちらか一方に味方せず、一方を対立させるようなことはしない」とメッセージを送ると述べた。

市場では、パウエル議長が7月の利下げ可能性を明確に排除しなかったことで、市場での利下げ予想確率が一時25%に達した。その後、予想を上回る5月の雇用動態調査(JOLTS)を受けて再び20%程度に低下した。

さらに、パウエル議長は同フォーラムで、FRBが他国中銀にドル資金を供給する「ドルスワップライン」についても言及。「法的権限の範囲内で、必要と判断すれば引き続き活用する用意がある」と述べた。ドルスワップは世界の金融安定に「大きく貢献している」と強調した。

ロイター
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