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フーリガンの「パリ事件」に隠れた逆差別
フーリガンと一緒に地下鉄に乗り合わせたチェルシーのサポーターの何人かはメディアの取材に対して、黒人以外の他の乗客数人も乗車を邪魔されていたと語っている。
1人だけでなく何人もの人々に迷惑行為を働いているから、より悪質だと考える人もいるかもしれない。でも今のイギリス社会を考えれば、これはむしろホッとする話だった。「白人相手にもやったのだから、それほど悪くない。黒人を選んだわけじゃない。人種差別ではなかった」というわけだ。
この話には階級の問題もからむ。中流層はたいてい、労働者階級のサッカーファンをひどく不快な集団と考えている。彼らを蔑称で「ネアンデルタール人」と呼ぶのはよくあることだ。確かにサッカーファンの振る舞いには時に、眉をひそめたくなるものがある。でも多くのファンが感じているのは、当局やリベラルなメディアは人種的マイノリティーの権利や利益を積極的に守ろうとするくせに、自分たちのことは真っ先に非難する、ということだ。
例えば2月半ば、ジャーナリストがユダヤの民族衣装の帽子をかぶってパリのイスラム地区を歩き、隠しカメラで人種差別を受ける様子を撮影した動画が話題になった。だがこの出来事は、パリの地下鉄事件ほど広く報道されていない。
地下鉄に乗ろうとした黒人男性が押し戻される光景は不快だし、正当化はできない。でも彼らフーリガンの行動は、あからさまな人種差別というよりむしろ、反・人種差別を叫びまくっている世間に対して突きつけた「クソくらえ」のメッセージに見えなくもない。
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