コラム

「障がい差別社会」に移民受け入れの覚悟はあるか?

2015年11月24日(火)15時20分

パリ同時テロの背景にはヨーロッパのアラブ系移民に対する差別や貧困問題があると指摘されている Yves Herman-REUTERS

 まずはこの場を借りまして、パリそして世界中で戦争、紛争やテロで犠牲になられた全ての方々に哀悼の意を表します。

 テロは許されざる行為であるのは間違いなく、短期的には国際社会としての対応(脊髄反射的反応ではない)が求められるのと同時に、「テロとの戦い」の一言で有耶無耶にされたあの時代と同じ轍を踏むこともまた避けられなければならないはず。真摯な議論と冷静な判断が今だからこそ我々には求められており、その中で長期的には「多様性をどう考え、受け止め、尊重していくのか」を考えることが事態を未然に防ぐためには必要と思うわけです。

 テロのニュースの合間にということになりますが、障がい児の出産「茨城では減らせる方向に」(その後、撤回)とのニュースが流れてきました。こうした優生思想的発想は残念ながらこれまでも度々出て来たため、またかとの思いにかられつつも、発言の当事者を見れば県教育委員であり、支援学校の様子を見てきた上での発言とのこと。しかも絵画の世界に長らく身を置かれてきたキャリア。発言の内容自体が受け入れがたいのはもちろんながら、強烈な違和感を覚えました。

「こういう事を平気で仰る人の方が、この方が考える障がい者より圧倒的かつ致命的に何か欠落してると思いますが、そんなあなたをこの社会から排除しましょうなどと、私はあなたには言わない。」とツィッターで書き込みを早々にいたしました。それを踏まえた上で。

 ご自身は社会的弱者ではないし、今後、そういった立場になられるだろうとの発想も皆無の様子。この方だけではありませんが、自分の思慮の欠落した部分は棚の上に置いて、ご自身こそ完璧な人間かのような完全なる上から目線を貫く。完全・完璧な人間などいるはずがないにもかかわらず、こういった類の発言を見るたびに、いったいどこからそうした自信が出て来られるのか全く持って不思議でならないわけです。

 障がいを抱える子供を育てるのは、健常者とされる子供たちの育児に比べて、人の手がかかることが多いのは事実です。それを「可愛そう」であるとか「気の毒」であるとの範疇に入れてしまうのは的外れですが、面倒を見る家族にしても肉体的、精神的にギリギリに追い込まれること(これは子育て全般に言えることですね)がある中で、地域に根差した支援学級などの手厚いサポートでどれだけの人たちが救われているか。そうした現場をご覧になったにも関わらず、そこに携わる教職員の数が多く大変な予算だろうと、経済効率性を重視したコストカットを暗に仄めかす。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ベトナム、新興国格上げ目前に海外資金流出

ワールド

アングル:メキシコ「麻薬王」拘束作戦の立役者、家族

ワールド

イラン戦争は2週目に、トランプ氏「無条件降伏」求め

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 6
    女性の顔にできた「ニキビ」が実は......医師が「皮…
  • 7
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 8
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 9
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 10
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story