コラム

急拡大する太陽光発電、その光と影

2015年08月17日(月)16時00分

 今年の7月、山梨県北杜市で、太陽光発電の開発の様子を取材した。北杜市は山梨県北部の八ヶ岳山系の南の斜面に位置し、自然が豊かで、避暑地・別荘地として知られる美しい場所だ。そして冬でも積雪が少なく、日照がよい。

 冒頭の写真は市内の光景だ。突如、森林が途切れ、太陽光発電の用地になっていた。事業者は住民に十分な説明をしなかったために、周辺住民の反対運動が起きていた。

 太陽光発電のために森林を切り開き、木を切り倒し、それを積んだトラックが町を行き来している。

NW2.jpg

 政府は、2012年から太陽光などの再エネを高値で買い取る固定価格買い取り制度(FIT)を始めた。これにより大量の新規参入が見込まれるいっぽうで、開発と環境保護との整合性は詳細に検討されてこなかった。条例による規制は自治体が行えるが、山梨県と北杜市の動きは鈍い。

 NPOが集計したところ、現在、北杜市では推計で130件の発電所が動いており、さらに1000件以上の計画があるという。まだまだ開発が続く。認定された太陽光発電がすべて稼働した場合、面積で推計すると500ヘクタール以上となり、東京ドーム(建物まで入れて4.7ヘクタール)100個分以上になる可能性があるという。このままでは北杜市を太陽光パネルと電線が埋め尽くすことになる。

電力不足を改善させた太陽光発電

 もちろん太陽光発電の増加は評価されるべき面がある。ここ数年、原発停止による電力不足が騒がれていたが、今夏はそれが問題になっていない。FITによって、短期間に全国で大量の太陽光発電が建設されたためだ。

 2012年の7月の制度開始から今年4月までの再エネ導入量は1876万kW(うち、太陽光が1811万kW)。稼働率が違うとはいえ、原発一基が最新型で出力140万kWであることと比べれば、大変な量だ。

プロフィール

石井孝明

経済・環境ジャーナリスト。
1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長を経て、フリーに。エネルギー、温暖化、環境問題の取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」“http://www.gepr.org/ja/”の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、 ウクライナと協議再開の用意と外務省高官

ビジネス

適切な金融政策運営が非常に重要、政府日銀一体で取り

ワールド

日本供与のエムポックスワクチン、3分の1が廃棄 コ

ワールド

焦点:米航空会社、感謝祭目前で政府閉鎖の影響に苦慮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 8
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 9
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story