コラム

「もんじゅ」から得た知見を整理し、その成果を後世に残す

2015年12月28日(月)15時20分

高速増殖炉「もんじゅ」は、事業断念の瀬戸際にある。写真は2011年 Issei Kato-REUTERS

長期停止により批判されてきた日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」が、事業の存続か断念かの瀬戸際に立っている。原子力規制委員会は11月13日、JAEAが「実施主体として不適当」として、今後半年をめどに、所管官庁である文部科学省が代わりの運営主体を決めるよう勧告した。

 この問題は長期にわたり混乱を続け、さまざまな論点がある。一番大きな論点「ではどうすればいいのか」という疑問を考えたい。私見だが、私は「もんじゅ」は、存続、稼働させ、高速増殖炉の研究を進めるべきと、思う。しかし、「研究費の出所がない」ため、それは大変難しい状況だ。残念ながら、その制約によって、この研究をあきらめなければいけないだろう。

日本の無資源状況を変える「夢の原子炉」

 「発電しながら新しい燃料をつくる夢の原子炉」「日本のエネルギー問題が解決」。手元にある1960年代に高速増殖炉の計画を説明する新聞記事や、政府パンフレットの資料にはこんな言葉が踊る。当時、高速増殖炉は大変な期待を集めた技術だった。

 高速増殖炉は日本の原子力の黎明期である1950年代から構想された。当時、核燃料の枯渇が懸念されていた。核分裂を起こしやすいウラン235は全ウランの0.7%程度。高速増殖炉では、大量に存在するウラン238をプルトニウムに変える、また原子力発電の使用済み核燃料の中のプルトニウムを燃料にすることで、燃料を発電しながらつくることが期待された。実現すれば、無資源国日本のエネルギー問題は解決する。そのために「夢の原子炉」と期待された。

 計画は実験炉、原型炉、実証炉、実用炉と段階的に行う予定で、1960年代には90年代には実用化するとの期待があった。実験炉「常陽」(着工1971年)もうまくいった。ところが、95年のナトリウム漏れ事故で原型炉とされたもんじゅは停止。事故隠しなどの混乱から当時の運営主体の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が批判、のち行革の中で統合され、再稼動の機会を失ってしまう。実用化のめどは現在には立っていない。

 これまで「もんじゅ」に投じられた資金は1兆円。現在も1日5000万円程度の経費がかかる。その巨大な研究費用は、このプロジェクトに対する期待の大きさの裏返しでもある。高速増殖炉への夢の語られた1960年代も今も、日本が無資源国であることは変わらない。もしチャンスがあれば、当初の夢を試す価値はあると思う。

プロフィール

石井孝明

経済・環境ジャーナリスト。
1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長を経て、フリーに。エネルギー、温暖化、環境問題の取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」“http://www.gepr.org/ja/”の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、パキスタンとの緊密な関係再確認 米の接近警戒

ビジネス

中国、ベネズエラ向け融資の報告要請 マドゥロ氏拘束

ワールド

ベネズエラ政府債価格が急伸、マドゥロ氏拘束で債務再

ワールド

情報BOX:ベネズエラの石油産業、膨大な埋蔵量 脆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 3
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── 韓国拉致被害者家族が見る日韓の絶望的な差
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 6
    ベネズエラ攻撃、独裁者拘束、同国を「運営」表明...…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    スペイン首相、アメリカのベネズエラ攻撃を「国際法…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story