コラム

EU・インド急接近で変わる多極世界の地政学...「新スパイスの道」構想は前進するか

2025年03月28日(金)13時20分

また、トルコとエジプトはこの地域における主要なプレーヤーであるが、構想から除外されていることから、その実施に異議を唱える可能性が大いにある。

インドは今年に入って、失われた勢いを取り戻すため、ガザの停戦後にIMECに対する外交的な働きかけを再開した。

ジャイシャンカル印外相は中東での怒涛のツアーを行い、ギリシャやイスラエルとも交渉した。また、モディ首相はフランスおよびアメリカを訪問した。特にインドとフランスは、このプロジェクト推進に熱心である。フランスはマルセイユ港をこの回廊のハブにしたいのだ。

トランプ大統領がもたらした不安定さが、世界のあり方を変えようとしている。前述のクラブツリー研究員は言った。「数カ月前には、欧州とインドがこのような交流を行うことになるとは誰も予想していませんでした」。

さて、日本はどうするのだろう。インド太平洋のこのような動きに、日本はどのような戦略を描き、どのように対応するのだろうか。

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プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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