コラム

独裁者プーチンの冷酷さを表す逸話(?)

2022年03月17日(木)17時30分
プーチンとバイデン

ILLUSTRATION BY AYAKO OCHI FOR NEWSWEEK JAPAN

<あるロシア人ジャーナリストは「ソ連が残した良き遺産はジョークだけ」と言った。いつの時代もロシアの民衆はしぶとく、独裁者に屈することはなかった>

【忠誠心】
ロシアのプーチン大統領が訪米し、アメリカのバイデン大統領と会談した。舞台は国連の本部ビルの最上階だった。

休憩中、2人はそれぞれの側近の忠誠心を試してみようということになった。

初めにバイデンが自身の側近の1人に言った。

「おい、そこの窓から飛び降りろ」

すると部下は泣きながら言った。

「勘弁してください。私には妻も子供もいるのです」

バイデンは笑って答えた。

「冗談だよ。すまなかったな」

続いてプーチンが自身の側近の1人に言った。

「おい、そこの窓から飛び降りろ」

するとその側近は、泣きながら窓に向かって近づいていった。バイデンが驚いて彼を止めて言った。

「本気にする奴がいるか! こんな所から飛び降りたら死ぬぞ」

それを聞いた彼は叫んだ。

「止めないでください!」

彼は続けた。

「私には妻も子供もいるのです!」

◇ ◇ ◇

ロシアという国は実は「ジョーク大国」。ロシア人ほどジョーク好きの民族はいないかもしれない。

ロシアではジョークのことを「アネクドート」と呼ぶ。ソ連時代、共産党による民衆への弾圧が激しくなるにつれ、アネクドートは発展した。

指導者を批判する自由を奪われた民衆は、陰に隠れて恐怖政治を笑うアネクドートを楽しんだのである。

スターリン、フルシチョフ、ブレジネフなど、笑いの標的に苦労することはなかった。いつの時代も民衆はしぶとく、独裁者に屈服することはなかった。

私の知人のロシア人ジャーナリストは「ソ連が残した良き遺産はジョークだけ」と言って笑っていたが、こういう何げない言葉の内側に歴史の真実は宿る。

そして今、世界のジョークの主役となっているのがウラジーミル・プーチンである。

元KGB(ソ連国家保安委員会)というそのキャラクターは、以前からジョーク界でも特異な存在感を発揮してきたが、今回のウクライナ侵攻によって一挙に主役に躍り出た。

ついに世界中を敵に回した

プーチンはレニングラード(現・サンクトペテルブルク)の生まれ。父親は機械技師で、一家の暮らし向きは決して豊かではなかったとされる。

そんな彼が夢中になったのが柔道だった。以前、北方領土問題に関して「引き分け」という柔道の表現を用い、日本側をはぐらかし続けたことは、いまだ記憶に新しい。

プロフィール
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ

ビジネス

日経平均は反発、対日関税巡り最悪シナリオ回避で安心
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story