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ウイグル人と自転車屋を殺す習近平?

ILLUSTRATION BY AYAKO OCHI FOR NEWSWEEK JAPAN
<今、独裁者ジョーク界の主役は習近平。中国政府によるウイグル人などの弾圧に対し、欧米で非難の声が広がっている>
【自転車屋】
北京のバーで習近平(シー・チンピン)が側近と酒を飲んでいた。習近平が言った。
「今度、1000人のウイグル人と、1人の自転車屋を殺そうと思う」
その話を耳にした1人の学生が、驚いて習近平に聞いた。
「1人の自転車屋って、それは一体どういうことなのでしょうか?」
習近平はニヤリと笑いながら、側近にこう言った。
「ほら見ろ。人民はウイグル人の命などなんとも思ってやしない」
ジョークの本質は風刺である。なかでも権力者、とりわけ独裁者を笑い飛ばすことは、最も人間らしい営為の1つとでも言えるかもしれない。
20世紀、人類が最大の笑いの標的としたのは、ソ連のスターリンだった。共産主義が抱える矛盾や不条理は格好の笑いの餌食となった。
そして21世紀、独裁者ジョーク界の新たな主役の座に堂々と上り詰めたのが、中国の習近平である。
アメリカ国務省によると、新疆ウイグル自治区では実に100万人以上もの人々が強制収容所に送られたと推計されている。
アメリカの超党派議員らは、2022年の冬季五輪の開催地を北京から変更するようIOC(国際オリンピック委員会)に要請中。彼らは中国政府がウイグル人などを弾圧していることを強く問題視している。
このような動きは、ヨーロッパなど世界各地に広がりつつある。イギリスの保守党元党首のイアン・ダンカン・スミス議員は、北京での五輪開催を容認することは「ヒトラーに対する宥和に等しい」と主張。
ナチスドイツに対してヨーロッパ諸国が宥和政策で臨んだことがヒトラーの増長を招き、第2次世界大戦につながっていったことは、20世紀の重要な教訓である。
日本では在日ウイグル人らが中国の人権侵害を非難する国会決議の採択などを求めているが、日本政府の動きは国際社会と比べていかにも鈍い。
これでは日本国憲法前文の「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」の理念にも反するのではないか。
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