コラム

中国の「傭兵」集団、5毛党

2011年03月02日(水)15時44分

 中東革命に触発され、中国でも先月末に一斉デモ「茉莉花(ジャスミン)革命」が呼びかけられたが、群集を取り締まる当局に加えて思いがけない集団が出現した。中国当局やその支持者が、ウェブ上で中国版ジャスミン革命をおとしめるコメントを大量に投稿したのだ。オンライン英字紙のチャイナ・デジタル・タイムズはこう報じている。


 中国のツイッターユーザーなら、先週突如としてある新しいアカウントが誕生し、活発なやり取りが始まったことに気づいただろう。書き手のなかには著名な民主活動家になりすました者や、反体制派や活動家を名乗ってその写真を使用したものまであった。

 こうしたアカウントのツイートは他のユーザーにリツイートされて瞬く間に拡散していった。その多くは、「5毛党」と呼ばれる集団に特徴的な、政府寄りのツイートだった。

■安い報酬でネット世論を操作

 5毛党とは、ネット上で中国政府寄りのコメントを発信する匿名集団。1件当たり5毛(5毛は1元の半分、6円程度)程度の報酬で情報操作を行っていることからこの名がついたようだ。チャイナ・デジタル・タイムズは彼らのコメントの中からいくつかを紹介している。


「もし中国が民主化したら、人民は分裂して多くのグループが出現するだろう。1つはアメリカの支持を受け、1つはロシアの後ろ盾を得て、1つは日本の助けを借り......ハハハ。中国人民は権益を外国に売り渡す売国奴として有名だし、内紛も大の得意だ。もしも民主化が実現すれば、中国の悲惨な歴史が再び繰り返されることになる」

「中国の現状に満足だ。アメリカにも暗部がある。どんなコインにも表と裏がある。私は、今の生活の質を悪化させるような革命には断じて参加しない。そんな革命で万一命を落としでもしたら? 私はそこまで愚かじゃない」

「エジプトの革命の記事を読んだが、これはアメリカの犬どもの仕業だと思う。良い結果は何も生まれない。アメリカ人は、自分たちが渡った後にその橋を吹き飛ばすような連中だ」

「(ノーベル平和賞を受けた服役中の民主活動家)劉暁波(リウ・シアオポー)の妻、劉霞(リウ・シア)は、友達や家族から引き離されて気力も萎えるなどと友人に悩みを打ち明けているらしいが、彼女の生活は快適に思えてならない。彼女を支援する外国の「友人たち」から、USドルをもらって楽しく生活しているじゃないか。劉霞のような人間が、ろくに働きもせずに中国にトラブルを持ち込むのもある意味当然だ。そうすればUSドルに養ってもらえるんだから!」

「中国共産党をいつも悪く言っている奴らは、ほんの一時でも15億人の人民を統治してみてはどうだろう? 中国共産党のように中国人民の大多数の賛同を勝ち得ることは、途方もない成果だということがわかるだろう。アメリカだって、すべての国民が満足しているわけではない。もしそうだとしたら、何でアメリカにはあんなに犯罪が多いんだ?」


──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年03月01日(火)12時37分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 3/2/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア国営石油ペトロナス、南シナ海で探査継続へ

ビジネス

競合他社の買収に関心ない─ステランティス会長=報道

ワールド

中国軍事演習、153機の活動確認と台湾 過去最多

ビジネス

中国の銀行、早ければ今週にも預金金利引き下げへ=ブ
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画に対する、アメリカとイギリスの温度差
  • 2
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが......
  • 3
    性的人身売買で逮捕のショーン・コムズ...ジャスティン・ビーバーとの過去映像が「トラウマ的」と話題
  • 4
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 5
    42の日本の凶悪事件を「生んだ家」を丁寧に取材...和…
  • 6
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 7
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 8
    冷たすぎる受け答えに取材者も困惑...アン・ハサウェ…
  • 9
    「コメント見なきゃいいんですよ、林さん」和歌山カ…
  • 10
    ビタミンD、マルチビタミン、マグネシウム...サプリ…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 6
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 7
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 8
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 9
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 5
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 6
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 7
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 8
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story