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鉱物開発

基本的な保護装備もなく、過酷で危険...それでも今なおモザンビークで違法採掘が続く理由

2025年8月18日(月)09時20分
ジンバブエ国境近くのマニカ州で泥まみれになりながら砂金採りをする採掘者ら

金や宝石を掘る仕事は過酷かつ危険で、基本的な保護装備さえなく、おまけに違法だ。写真は、ジンバブエ国境近くのマニカ州で泥まみれになりながら砂金採りをする採掘者ら。2010年9月、マニカ州で撮影(2025年 ロイター/Goran Tomasevic)

金や宝石を掘る仕事は過酷かつ危険で、基本的な保護装備さえなく、おまけに違法だ。

しかし、モザンビークのマニカ州で働く裸足の鉱夫らにとって、こうしたリスクは冒す価値がある。


西でジンバブエと接するマニカ州には、つるはしやショベルで金や宝石を掘り当てるのを夢見る男たちが命がけで集まってくる。

「ここには大金がある」と語るのは、ムクルマドゼ地区で作業する数百人の鉱夫の一人、フェルナンド・マサダさんだ。

「ガリンペイロ」と呼ばれる鉱夫らは南部アフリカ各地から集まった人々で、モザンビーク人、ジンバブエ人、マラウイ人などが含まれる。

マサダさんはかつて、1日で270グラムの金を採掘し、その代金で家を改修してバイクを購入したこともある。「だからここを離れられない」

しかし、こうした夢には有害な側面がある。採掘現場周辺の川が汚染され、水銀が土壌に浸透し、農民に悪夢をもたらしているのだ。

モザンビーク国立統計研究所(INE)の2021年のデータによると、同国には約23万人の鉱夫がいる。マニカ州には小規模な採掘拠点が338カ所あり、うち288カ所が稼働中だ。

世界銀行の推計では、アフリカのサハラ以南の田舎で小規模な採掘に従事する人は約1000万人に達する。

国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は昨年の報告書で、小規模鉱山からの違法な金取引がウクライナからスーダンに至る紛争やテロリズムの資金源となり、組織犯罪を助長していると指摘した。

しかし、ムクルマドゼ地区で過酷な労働に励む男性たちにとって、この危険な仕事は世界最貧国の一つで生きるための命綱だ。ただし、報酬は予想できない。

「運次第だ」と、ジンバブエ人のシモン・チバタさんは言う。

鉱夫らは、採掘現場を訪れる買い手に金を直接販売することができる。約10キロ離れたマニカ町で売るのに比べて相場は安いが、多くの鉱夫は当局の摘発を恐れて現場で売る。

金1グラムの価格は、鉱山では69ドル(約1万150円)、マニカ町では116ドル前後だ。

「時には、到着したその日のうちに十分稼いで帰れることもある」とチバタさんは語った。

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