BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音楽市場で王座を守れるか【前編】
THE KINGS OF K-POP ARE BACK
もはや常連となったアメリカの人気トーク番組で「Dynamite」を披露(20年10月) NBCーNBCU PHOTO BANK/GETTY IMAGES
<兵役による長期休止を経て、BTSがついにグループ活動を再開した。予約400万枚、即完売のツアーが示す熱狂の一方で、音楽シーンはこの数年で大きく様変わりしている。ラテンポップの台頭、Kポップのグローバル化、そして新世代アーティストの躍進──。かつての成功は、果たして未来を保証するのか>
▼目次
Kポップ自体も進化したが
3年9カ月に及ぶ活動休止を経て、BTS(防弾少年団)が帰ってきた。熱烈な推し活で知られるARMY(BTSのファン)は、このときを今か今かと待っていたようだ。新アルバム『ARIRANG』の予約は1週間で400万枚を突破し、ワールドツアーのチケットも発売分は瞬く間に完売した。
だが世の中では新しいトレンドが生まれ、若いアーティストが次々と台頭する。メンバーの大半が30代に入った今、常識で考えれば、Kポップの王者もさすがに人気の低迷は避けられないのではないか。
いやBTSなら、そんな常識さえ覆すかもしれない。彼らはKポップ史上最も成功したスターであり、その影響力はアルバムやチケットの記録的な売り上げを超越する。

7人の少年がソウルの古びた地下スタジオで昼夜を問わず練習に打ち込み、たゆまぬ努力で国際的なスターの座へ。そんなBTSのサクセスストーリーは、勤勉と成功が重視される韓国のみならず世界中の人々を勇気づけた。
2013年のデビュー直後はパッとしなかったが、やがて若者の葛藤を表現した曲がYouTubeを通じて世界の視聴者に届いた。彼らはミュージックビデオや韓国の音楽番組に出演するだけでなく頻繁に舞台裏の様子を生配信したので、ファンはいつでもBTSに会うことができた。「グループと共に歩み、困難を乗り越えている気がした」「つらいときにもBTSの存在に慰められた」と、多くのARMYが語る。
この「台本のない」配信は、エンターテインメント業界におけるファンエンゲージメント(関係構築)戦略を一変させた。BTSにとっては、生配信でARMYと強い絆を築いたことがコロナ禍での人気持続につながった。
パンデミック期間中もBTSは楽曲の制作を続け、その音楽は新たな高みへと飛翔。初めて全編を英語で歌った2020年の「Dynamite」、21年の「Butter」と「Permission to Dance」が全米シングルチャートでナンバーワンを獲得し、ジェーソン・デルーロやコールドプレイとのコラボ曲などさらに3曲が1位に輝いた。アジアのアーティストがここまでの成功を収めた例はほかにない。
Kポップ自体も進化したが
ところが22年6月、BTSはソロ活動に力を入れ「成長する時間」を確保するために活動を休止すると発表した。メンバーには韓国人男性の義務である兵役が迫っており、入隊すればそれぞれが1年半は活動できない。こうして世界を舞台とした快進撃は、突然断ち切られた。
それでもメンバー7人──RM(アールエム)、Jin(ジン)、SUGA(シュガ)、j-hope(ジェイホープ)、V(ヴィ)、Jimin(ジミン)、Jung Kook(ジョングク)──は入隊の時期を調整することで、休止中も世間の注目を引き付け続けた。22年12月に最年長のJinが入隊し25年6月にSUGAが除隊するまで、全員が不在とならないよう少なくとも1人はアーティストとして活動を続け、新作をリリースした。
兵役中のメンバーが休暇で戻ればみんなで写真を撮り、公開した。リードボーカルのJung Kookはファン向けコミュニティープラットフォームのウィバースでソロライブを生配信し、2000万の視聴者を集めた。
ソロで出したシングルやアルバムはおおむね好評で、Jiminの「Like Crazy」とJung Kookの「Seven」は全米チャートで初登場1位に輝いた。それでもソロ作品は売れ行きも注目度もグループに及ばず、交際報道──ようやく恋愛する時間ができたのだろう──が世間を騒がせることもあった。

音楽シーンも変化している。Kポップグループは今も世界を狙うが(専門家によれば、今やKポップのファンは90%が韓国以外にいる)、最も利益の大きい欧米市場の人々の関心はよそに移ったかにもみえる。
なかでも勢いがあるのがラテン系ポップス。プエルトリコ出身のバッド・バニーは今年のグラミー賞で年間最優秀アルバム賞を獲得し(スペイン語アルバムで史上初の快挙だ)、アメフトの優勝決定戦スーパーボウルでのステージ披露も話題を呼んだ。
Kポップ自体も韓国のポップ音楽という枠を超え、グローバルなジャンルへと進化している。例えば世界で人気のXGは、Kポップの育成システムと宣伝手法を取り入れたグループで拠点は韓国だが、7人のメンバーは全員が日本人だ。
アニメ『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』はネットフリックスの配信で世界的にヒットし、今年のアカデミー賞で長編アニメーション賞と歌曲賞を獲得した。
劇中歌の作詞作曲と歌唱を担当したEJAE(イジェ)は韓国系アメリカ人で、韓国の芸能事務所の練習生からシンガーソングライターに転身した。これもKポップが韓国の枠組みを超えた証拠だろう。
BTSの稼ぎで数十億ドル規模の巨大芸能事務所へと成長したハイブでさえ、流行に合わせて所属アーティストを多様化している。グラミー賞候補になったKATSEYE(キャッツアイ)は多国籍のガールズグループで、サントス・ブラボスはラテンアメリカのボーイズグループだ。
「ポップミュージックは特定の音楽様式ではない。さまざまなジャンルの中で純粋に再生数など数字の勝負に勝った音楽が、結果的にそう定義される」と、Kポップを初めてiTunesで世界配信したDFSBコレクティブのバーニー・チョー社長は説明する。
「25年は世界最大のヒット曲のうち2曲がKポップで(ブラックピンクのロゼとブルーノ・マーズがコラボした「APT.」と、『デーモン・ハンターズ』の劇中歌「ゴールデン」)、最も売れたアルバム20枚の4分の1がKポップだったことを考えると、Kポップは世界で最も人気のある音楽ジャンルの1つになった。将来的には、韓国発または韓国系のポップ音楽という扱いになるかもしれない」
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