最新記事

中国共産党

中国で真っ赤に燃える建党100周年の「紅色旅游」

2021年5月12日(水)17時52分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
人民大会堂に翻る中国の「紅い旗」

翻る中国の「紅い旗] Kim Kyung-Hoon-REUTERS

紅い革命根拠地を巡って旅をする「紅色旅游」(紅い旅)が中国全土を真っ赤に染めている。2004年に始まったものだが、習近平政権に入って本格化し、建党100周年記念行事として拍車をかけている。

なぜ2004年(胡錦涛政権時代)に始まったのか?

中国で最初に「紅色旅游」(紅い旅)指針が発布されたのは2004年12月19日で、胡錦涛政権が始まったばかりのことだ。中共中央弁公庁と国務院弁公庁が共同で「2004年―2010年 全国紅色旅游発展計画綱要」(以下、綱要)に関する通知を発布した。

綱要には「紅色旅游を発展させることは、革命の伝統的教育を強化し、全国人民、特に青少年の愛国情感を増強させ、・・・革命老区の経済社会の発展を促すことにつながり、同時に旅行産業の新しい成長点となる」という趣旨の言葉がある。

1994年に江沢民が始めた「愛国主義教育」は主として「抗日戦争時の拠点」として、抗日戦争に焦点が絞られてきた。もちろん、1989年6月4日に発生した天安門事件が、海外、特にアメリカの文化に触発された若者たちに負うところが大きいことから、「中国にだって伝統的な素晴らしい文化があるのだ」ということを若者に知らせようということがスタートにあった。しかし江沢民の父親が当時の日本の傀儡政権だった南京政府(汪兆銘政府)の官吏であったことから、「自分は決して売国奴ではない」ということを示そうとして、愛国主義教育は「反日教育」の方に傾いていった。

胡錦涛政権(2003年3月~2013年3月)に入ると、江沢民の色彩がやや薄まり、同時に高速鉄道建設を実現させたいという「経済建設的必要性」から、綱要に書いてあるように「旅行産業(観光産業)の新しい成長点」として「紅色旅游」政策を推進するようになったのである。

事実、2004年1月に中国政府は「中長期鉄路網計画」を発表している。この中で中国政府は2020年までに1.2万kmの高速鉄道を建設するという目標を立てている。

1990年代末には高速鉄道建設に対する賛否両論があって、結果として賛成する方向に動いていったので、その効率性を証明する必要が、一方ではあった。

と同時に、胡錦涛政権では「小康社会」を目指していたので、老革命区(昔の革命根拠地)が見捨てられ無残に社会の発展から振り落とされて極貧の状況にあることに注目するようになったのである。

なぜ老革命区は見捨てられるようになったのか?

実は90年代末から2000年初頭にかけて、私は中国の老革命区を調査に行ったことがある。2000年1月から「西部開発」という大きなプロジェクトが始まったのだが、その中に中国の大学卒業生を西部地域の未発展地区に派遣して西部開発に貢献させるという項目があった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、大規模軍事パレードを来月実施 数万人参加へ

ワールド

米連邦高裁、解雇された連邦政府職員の復職命令に否定

ワールド

一定月齢以下の子どものコロナワクチン接種を推奨=米

ワールド

インド、綿花の輸入関税を9月末まで一時停止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中