最新記事

クーデター

コカ・コーラ、マッキンゼー、ソニー...... ミャンマーの外資系企業、国軍が土地所有のビルから立ち退く

2021年5月13日(木)11時13分

ミャンマーの最大都市・ヤンゴン中心部の高級オフィスビル「スーレ・スクエア」に入居する複数の外資系企業が、既に同ビルから立ち退いたか、入居契約を見直していることが、ロイターの取材で明らかになった。写真はヤンゴンで3月27日、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の旗を持つ男性(2021年 ロイター)

ミャンマーの最大都市・ヤンゴン中心部の高級オフィスビル「スーレ・スクエア」に入居する複数の外資系企業が、既に同ビルから立ち退いたか、入居契約を見直していることが、ロイターの取材で明らかになった。国連は同ビルがミャンマー国軍が所有する土地に建てられたとしている。

活動家団体「ジャスティス・フォー・ミャンマー」は先月、同ビルの入居企業に間接的に国軍を支援するのをやめるよう呼び掛け、入居企業のうち18社のリストを公表した。

ロイターは、リストに挙げられた全ての企業に取材した。国軍による2月1日のクーデター以降、ミャンマーではデモが広がり、経済活動が崩壊している。国軍によるデモ弾圧で多数の死者も出ている。

2017年開業のスーレ・スクエアは香港に上場する高級ホテルチェーンのシャングリラ・アジアの現地法人が開発主体で、ビルと併設ホテルの管理も行っている。

国連の2019年の調査団によると、土地はミャンマー国軍から借り受けた。

シャングリラに土地の所有者を問い合わせたが、コメントを避けた。

国軍もコメント要請に回答しておらず、ロイターは借地契約を確認できていない。

同ビルにオフィスを構えていたコンサル大手・マッキンゼーの東南アジア部門の広報担当者は、今年序盤にオフィスの賃借契約を終了したと述べた。詳しい説明はなかった。

米飲料大手コカ・コーラは電子メールで、賃借契約は6月半ばまでだが、更新しないと表明。「ビジネス要件の変化」を理由に挙げた。

ロイターも同ビルのオフィスを利用していたが、ジャスティス・フォー・ミャンマーのリストには掲載されなかった。広報担当者は、現在は同オフィスを利用しておらず、入居契約を見直していると述べた。

シンガポールを拠点とするプライベートエクイティー(PE)会社、エマージング・マーケッツ・インベストメント・アドバイザーズは、賃借契約が3月に終了したため、立ち退いたと述べた。ノルウェーの肥料大手・ヤラは、代替オフィススペースを探し始めたと明らかにした。

同ビルから立ち退いたあるいは入居契約を見直していると明らかにした企業のうち、国軍の所有地であることを理由に挙げたのはヤラとノルウェーの通信会社・テレノールの2社だけだった。

世界銀行も同ビルにオフィスを持つ。世銀は「行内の方針や手続きに沿ってミャンマーの状況を精査している」とコメントした。

ジャスティス・フォー・ミャンマーのリストに名を連ねた企業の1つであるソニーは、ミャンマーのオフィスは現地の状況を踏まえて既に閉鎖しており、現在は代理店を通じてのみ製品を販売していると説明した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由
・ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀副総裁、ステーブルコイン規制緩和は金融安定性

ワールド

COP30、先住民デモ隊と警備隊が会場入り口で衝突

ビジネス

ノボノルディスク、インドで「ウゴービ」を最大37%

ビジネス

10月ブラジル消費者物価、予想より伸び鈍化 年明け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中