コラム

【書評】Life after Google──なぜGoogleの時代が終わるのか

2018年08月10日(金)16時00分

Life After Google(George Gilder著) Simon & Schuster UK

<無敵に見えるGoogleの全盛期が終わる!?──話題の新著『ライフ・アフター・グーグル』の予測は当たるのか、AI新聞編集長が読み解く>

AI新聞からの転載

無敵に見えるGoogleの全盛期が終わる!?トドメを刺すのがブロックチェーン?シリコンバレーの価値観が180度変わる?

そんなことありえるのだろうか。狐につままれた気分で、7/16に発売になったばかりの「Life After Google(George Gilder著)」を英語版電子書籍で読んだ。

インターネットの本格普及より前に今の時代を見通した著者

まず、著者であるGeorge Gilder氏ってどんな人物なのだろう。

著者は、1994年に「Life after Television」という本を書いて話題に。その主張は、テレビの全盛期が終わり、ネットワーク・コンピューターが主流の時代になる、というもの。10年後には、携帯電話がコンピューターの主流になり、メール、ニュースを表示するようになる。財布の感覚で持ち歩き、音声を認識し、街中をナビしてくれるようになる、と予測している。

1994年というとインターネットの商用利用が始まるか始まらないかという時代。当時僕はシリコンバレーにいて、インターネットという言葉を聞いて勉強し始めていたころだった。インターネットに関する書籍は少なく、あったしてもインターネットの前身である米軍のネットワークを技術的に解説したものがほとんどだった。

シリコンバレーで開催されたいくつかのインターネットの勉強会に参加してみた。ネット上に無数のページが掲載されるようになるという。「無数のページが掲載されるのはいいですが、どうやって必要なページを探してくるんですか」と講演者に質問した。「いい質問です。必要なページを見つけ出すサービスを開発した企業は、大成功するでしょう」というのが答えだった。

その後、友人の日本女性の中国系米国人のボーイフレンドが、Yahoo!というサービスを立ち上げたと聞いたとき、ああ、このことかと思った。立ち上げたジェリー・ヤンは大金持ちになった。

僕がポータルサイトや検索エンジンの登場くらいしか予感できなかった時代に、Gilder氏がその先まで正確に見通せていた。ものすごい慧眼だと思う。

あまりに斬新な話だったので、新聞王News Corpのルパート・マードック氏がヘイマン島にGilder氏を招待し、重役の前で講演させたという。スティーブ・ジョブズ氏もこの本を読み、友人に勧めたといわれている。

この本の中で的中しなかった予測が二つある。1つは、広告がなくなる、ということ。もう1つは、大企業ではなく人々が力を持つ、ということ。つまりPower to the Peopleということだ。

ただこの2つの予測は的中しなかったのではなく、実現まで時間がかかっている、というのがGilder氏の言い分だ。そしてこの2つの予測は、今回ブロックチェーンという新しい技術を得て、いよいよ実現することになるという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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