コラム

いよいよスマートスピーカー発売ラッシュ。最後に笑うのは?

2017年09月14日(木)20時00分

秘書になったときが普及のとき

最初は機能が限定的かもしれないが、スマートスピーカーは今後、ありとあらゆる家電機器やサービスと連携し、声でそれらの機器やサービスを操作できるようになっていく。米国では、アマゾンEchoと連携している家電機器、アプリ、サービスの数は、今年6月の時点で既に1万5000を超えている。テレビや電灯、エアコンをつけたり、リビングルームにいながらにしてガレージの中の自動車のエンジンをかけたりというようなことが、音声コマンドで可能になっている。ピザを注文したり、タクシーを呼んだりもできる。スマートスピーカーが、家電機器、アプリ、サービスの司令塔になるわけだ。

特にスマートホーム機器と呼ばれるような家電機器の司令塔になるころから、スマートスピーカーは徐々に売れ始めるのだと思う。しかし今のスマホを超えるほどの勢いで売れるようになるのは、スマートスピーカーがユーザーの「秘書」になったときだろう。

向こうから話しかけてくる

グーグルのスマートスピーカー「グーグルHome」は、最新のバージョンで「プロアクティブ(能動的)」機能を搭載してきた。聞かれたことに答えるという「受動的」対応ではなく、必要であればスピーカー側から話しかける機能だ。スピーカーのLEDの輪が光り始めれば、グーグルHomeの方から「話しかけたい」というしるし。「OKグーグル、何か用?」と聞くと、「あなたのグーグルカレンダーによると、午後2時からミーティングが入っています。ミーティングに間に合うには1時半に出発しなければならないところですが、高速道路で交通渋滞が発生しました。1時15分に出発することをお勧めします」と答えてくれたりする。スケジュールや交通状況を把握し、適切なアドバイスをする。まさに有能な秘書のようだ。

フェイスブックも、秘書のようなAIを開発中だと言われている。メッセンジャー上で友人と食事に行こうという話で盛り上がれば、自分の秘書AIと相手の秘書AIがスケジュールを調整し、レストランを予約してくれるようになるという。フェイスブックもスマートスピーカーを開発中だと噂されている。フェイスブックのスマートスピーカーに、秘書AI機能が搭載されるのは間違いないだろう。

友人たちが秘書AIでスケジュール調整しているのに、一人だけ秘書AIを使わない友人がいれば、「お前も秘書AIを使えよ」というプレッシャーがかかるに違いない。なのでこのフェーズに入れば、スマートスピーカーは一気に広がるのではないかと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

10月経常収支は2兆8335億円の黒字=財務省

ワールド

中国機の安全阻害との指摘当たらず、今後も冷静かつ毅

ビジネス

バークレイズ、英資産運用大手エブリン買収を検討=関

ワールド

独仏首脳、次世代戦闘機開発計画について近く協議へ=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story